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脳灌流圧とは
頭蓋内は脳組織(80%)、血液(10%)、髄液(10%)の 3 つの成分で構成されており、この総和を頭蓋内圧(ICP)と呼びます。正常値は 10 〜 15mmHgで、15mmHg 以上の高値を頭蓋内圧亢進と定義します。
髄液は脳室内を循環し、血液は平均動脈圧で頭蓋内に流入しています。
脳灌流圧(cerebral perfusion pressure: CRP)は平均動脈圧と頭蓋内圧(ICP)の差です。
脳灌流圧が低下すると、(細)動脈の拡張により脳血管抵抗が低下し、脳血流量を維持しようとします。
さらに灌流圧が低下すると、血流も低下し、脳への酸素供給量が低下し酸素摂取率(oxygen extraction fraction:OEF)を上昇させ、脳酸素代謝(cerebral metabolic rate of oxygen:CMRO2)を維持しようとします(この状態をmisery perfusionと呼びます)
逆に脳灌流圧が上昇して、150mmHg以上になると、脳血流の増加により脳血液関門が破綻してvasogenic edema(血管性浮腫)をきたします。この現象はbreakthroughとよばれます。
脳虚血状態では嫌気性代謝となる
脳の活動に必要なエネルギーは、血液から供給されるグルコースが、好気性代謝によってエネルギー(ATP)を得ます(好気性代謝と呼びます)
嫌気性代謝では、乳酸発酵が起こりここからエネルギーを得ます(2分子のATP)。これは好気性代謝と比較するとエネルギー効率が悪いです。
脳虚血状態では脳への酸素供給は不足するため、嫌気性代謝となるためエネルギー効率が悪くなります。
血行力学的代償
上で述べたように、脳灌流圧が低下すると、脳細動脈が拡張し、脳血液量(cerebral blood volume:CBV)が増加します。この代償により、脳血流量(cerebral blood flow:CBF)が正常に保たれます。
CBF=CBV/MTT
(MTTは平均通過時間 mean transit time)
という関係式が成り立ちます。
動脈血酸素分圧・二酸化炭素分圧と脳血流量の関係
動脈血酸素分圧(Pao2)が50mmHg以下になると、ヘモグロビンの酸素飽和度が顕著に低下し、動脈血酸素含有量が低下して脳血管の拡張をもたらします。この結果脳血流(CBF)は増加しはじめ、30mmHgで2倍となり、20mmHgで最大となります。それ以下になると嫌気性代謝が始まります。
Paco2が25~60mmHgの範囲では、Paco2が1mmHg上昇するごとに脳血流は3-4%増加します。
Paco2上昇は、脳血管を拡張させ脳血管床を増加させることにより、脳血流を増加させ頭蓋内圧亢進をもたらします。したがって、頭部外傷などの際にはPaco2の極端な上昇は避ける必要があります。