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抗IL-6薬(IL-6の受容体をブロックする)

エンスプリング(一般名:サトラリズマブ)は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の再発予防に使用される皮下注射薬です。この薬は、インターロイキン-6(IL-6)受容体に結合し、IL-6の働きを抑制することで、NMOSDの再発を防ぐ効果が期待されています。

IL-6はB細胞から分化したプラズマブラストを刺激しAQP4を産生します。

抗IL-6薬は、もともとリウマチ・膠原病の分野で先に研究されていました。関節リウマチの治療薬(抗IL-6)であるアクテムラの遺伝子を改変して半減期を延ばしてエンスプリングが開発されました。

エンスプリングの適応は抗AQP4抗体陽性のNMOSDに限られます

NMOSDの慢性期治療におけるステロイド

NMOSD再発例の約半数は発作後1年以内に再発すると言われており、「クラスター期」と呼ばれ注意が必要です

この時期にはステロイドが15㎎/日を切ると再発が十分に抑えられないことが知られています。早々のステロイド減量は困難でしたが、近年分子標的薬が登場し、この状況は劇的に変化を遂げています。

サトラリズマブは導入後ステロイド1~3ヶ月もすれば大幅なステロイド減量が可能になります。

サトラリズマブの使用で1年で10.4㎎→4.9㎎(2ヶ月で1mgずつのペースで減量し半分に)へグルココルチコイドが減量できた(4分の1はステロイドフリー)というデータがあります。

副腎不全の予防や骨にも保護的に働くことが期待されます。

使用方法: 通常、成人および小児には、初回、2週後、4週後にそれぞれ120mgを皮下注射し、その後は4週間隔で120mgを自己注射します。

重大な副作用として、感染症、無顆粒球症、白血球減少、好中球減少、血小板減少、肝機能障害があらわれることがあります。主な副作用として注射に伴う反応、リンパ球数減少が報告されています。
特に、感染症には注意が必要です。IL-6は急性期反応(発熱、CRP 増加等)を誘因するサイトカインであることから、エンスプリング投与によりこれらの反応が抑制され、感染症に伴う症状の検知が遅くなる可能性があります。

ワクチン効果が減弱するB細胞療法にくらべて、サトラリズマブには臨床現場では処方しやすい薬剤という評価があります。

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投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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