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MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)とは?
MPTPは神経毒性を持つ化学物質(麻薬)で、脳内で代謝されるとドーパミン神経を選択的に破壊し、パーキンソン症状を引き起こします。
MPTPの作用機序
MPTP自体は無毒ですが、体内に入るとアストロサイト(星状膠細胞)で代謝され、MPP⁺(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)という強力な神経毒に変換されます。(MPTPが活性型のMPP+になる)
ドーパミン神経細胞はドーパミントランスポーター(DAT)を介してMPP⁺を取り込みます。
MPP⁺はミトコンドリアの電子伝達系(複合体I)を阻害し、ATP産生を阻害することで神経細胞のエネルギー代謝を破壊し、最終的に細胞死を引き起こします。
結果として黒質のドーパミン神経が損傷し、パーキンソン病の症状が現れます。
MPTPとパーキンソン病研究
1980年代、カリフォルニアでMPTPを含む不純な合成ヘロイン(MPPP)を使用した薬物乱用者が、急性のパーキンソン病様症状を発症したことが発端で研究が進みました。
MPTPを用いた動物モデル(マウス・サルなど)は、パーキンソン病の研究や治療薬の開発に役立てられています。
MPTPとMAO-B阻害薬
セレギリンやラサギリン、サフィナミド(MAO-B阻害薬)は、MPTPの代謝を阻害し、MPP⁺の生成を防ぐことで神経毒性を抑制します。
これはMAO-B阻害薬がパーキンソン病の進行を遅らせる可能性がある理由の一つです。
MAO-B阻害薬(モノアミン酸化酵素B阻害薬)は、脳内のモノアミン酸化酵素B(MAO-B)を阻害することで、ドーパミンの分解を抑え、パーキンソン病の治療に用いられる薬剤です。
早期から単独使用可能で進行期にレボドパ製剤と併用で状態を改善させます。