目次

フィンテプラは①Dravet症候群(ドラベ)および②Lennox-Gastaut症候群に対する新規抗てんかん薬です。

ドラベ症候群

ドラベ症候群は、多くの場合1歳までに最初のけいれん性発作が起こり、その後も発作を繰り返す重症の小児てんかん症候群の1つです。 発作は入浴や発熱などで誘発されやすく、てんかん重積状態になることも少なくありません。従来の抗てんかん薬ではコントロールできないことがあり、次第に発達の遅れや運動失調が現れます。

患者数は日本では約3,000人いるとされています。8割弱の患者さんは、「ナトリウムチャネル遺伝子SCN1Aという遺伝子に異常があることがわかっています。この遺伝子異常により神経細胞の過剰な興奮が起こり、難治性てんかんを発症すると考えられています。

Lennox-Gastaut症候群

レノックス・ガストー症候群は、多くは幼少期から小児期(3~5歳)に発症し、数種類の発作と特徴的な脳波がみられる薬剤抵抗性(難治)の小児てんかん症候群の1つです。

発作は難治で成人になっても残ることが多いですが、発作回数は小児期より減少します。また、知的な遅れがみられることが多いです。小児てんかん患者さんのうち、0.6~4%程度と言われており、人口10万人あたり20~30人程度いると考えられます。また、女児に比べて男児が1.5倍程多くみられます。

生まれつき脳の形に異常がある場合や水頭症(脳室に髄液が溜まってしまう病気)、脳に酸素や血液がうまく巡らず障害が残った場合、交通事故や転落などで頭に大きなケガをして脳に損傷が生じた場合、脳のがんなどが原因でレノックス・ガストー症候群となることがあります。

また、別のてんかんである乳児てんかん性スパズム症候群(ウエスト症候群を含む)からレノックス・ガストー症候群に変化する場合があることも知られています。

さらに、上記のような原因がない場合でもレノックス・ガストー症候群が発症する場合もあり、そのような患者さんには「GABRB3、ALG13、SCN8A、STXBP1、DNM1、FOXG1、CHD2」などの遺伝子に異常があることが見つかっています。

作用機序について

本剤の明確な作用機序は明らかにされていませんが、脳内の特異的セロトニン受容体(5-HT1D,5-HT2A,
5-HT2C 受容体)に結合し、抑制系神経のセロトニン作動性神経を賦活化することによって抗発作作用を示
すと考えられています。本剤は主に肝臓で代謝されCYP1A2,CYP2B6 およびCYP2D6が寄与すると報
告されています。またfenfluramine の主要代謝物であるnorfenfluramine も薬理活性を有することが知られています。

臨床試験成績

2016年に欧米を中心にDravet症候群患者119名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験が実施された。この試験は、fenflurmine を 0.2 mg/kg/日投与群、0.7mg/kg/日投与群、プラセボ群の3群に無作為に割り付けて14週間の発作頻度の変化量を観察したものです。fenfluramine 0.2 mg/kg/日および0.7 mg/kg/日投与群の強直間代発作の頻度はプラセボ群と比較してそれぞれ34%,64%減少しました。

同時期にLennox-Gastaut症候群(Lennox Gastaut syndrome:LGS)を対象とした二重盲検試験が実施されました。fenfluramine 0.2 mg/kg/日および0.7mg/kg/日投与によって転倒発作の頻度は、それぞれ14%、27%とプラセボ群に比較して有意に減少ました(プラセボ群は7%の減少)。いずれの試験も実薬群で食
欲不振(20%以上)、眠気(10%以上)が高頻度に認められました。現在も長期継続試験で安全性が検証されていますが、心臓弁膜症など重篤な心臓疾患は認められていません。
日本でも同様の臨床試験が行われ、2022年12月にDravet 症候群患者の付加治療薬として承認を受けました。

フィンテプラ®の服用量

フィンテプラ®は、1日2回決められた時間に服用します。服用する量は、フィンテプラ®の投与を開始してから段階的に増量します。また、併用するお薬(STP:スチリペントール)によって、服用する量が異なる場合があります。

fenfluramine 単回投与における最高血中濃度到達時間は3 時間、消失半減期は21時間で食事の影響を受けません。一方norfenfluramine の消失半減期は41~48時間と長い。CYP(cytochrome)阻害薬であるSTPを併用するとAUC(血中濃度時間曲線下面積)が約2倍となり、fenfluramine の消失半減期も1.5倍延長します。このため、STP併用時は本剤の投与量を減量する必要があります。

fenfluramine は、投与初期から臨床効果が現れやすい反面、眠気や食欲不振の出現も早いので注意が必要です。心疾患の定期的なモニタリングが必要ですが、今後難治性てんかんの治療に大きく貢献するものと期待されます。

服用方法

本剤1mL中には、お薬の成分(フェンフルラミン)が2.2mg含まれています。

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投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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