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一過性脳虚血発作(transient ischemic attack: TIA)は、局所脳または網膜の虚血に起因する一過性の神経機能障害です。画像上急性期脳梗塞巣がなく、症状が24時間以内に消失したもので、脳卒中前触れ発作と言えます。

TIAは病歴として突然の脱力、歩行障害、構音障害、複視や霧視を訴え、顔面や上下肢片麻痺、感覚鈍麻、 協調運動障害、眼球運動制限や視野欠損、失語や構音障害、半側空間無視などの失認を診察上認めることがあります。軽微な脳内出血や脳梗塞とTIAとの鑑別には、CTやMRI画像診断が有用です。

TIAは発症後90日以内の脳卒中スコアが15~20%あり、その半数は発症2日以内の急性期に起こすとされます。早期治療により90日以内の脳卒中発症が80%軽減されます。

ABCD2スコア

脳梗塞発症の危険度予測の代表としてABCD2スコアがあり、TIA発症後2日以内の脳梗塞発症を予測するリスクスコアです。高値例で再発リスクが高いことが知られます。

以下の5つの要素で評価されます。

項目点数
Age(年齢) 60歳以上1点
Blood Pressure(血圧) 収縮期140mmHg以上 または 拡張期90mmHg以上1点
Clinical Features(症状) 片麻痺2点
言語障害のみ1点
Duration(持続時間) 60分以上2点
10~59分1点
Diabetes(糖尿病)の既往1点

リスク分類

  • 0~3点:低リスク(2日以内の脳卒中発症率 1.0%)低リスク
  • 4~5点:中リスク(2日以内の脳卒中発症率 4.1%)中等度リスク
  • 6~7点:高リスク(2日以内の脳卒中発症率 8.1%)高リスク

AHA/ASA(American Heart Association/American Stroke Association アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会)は ABCD2 スコア4点以上を高リスク TIA として入院加療を推奨しています。

しかしながらABCD2 スコアでは、心房細動などの心疾患や早期に治療介入を要する頸動脈病変や頭蓋内主
幹動脈病変を有する TIA 症例を見落としてしまう可能性があります。このためABCD2 スコアの変法としてABCD2-I(I は imaging の頭文字 :同側の内頚動脈の50%以上狭窄と拡散強調画像急性期病変の評価)スコアや ABCD3 スコア(D3 は従来の D2 に dual TIA が追加:7日以内のTIA既往)にアップデートされました。これらを取り入れたABCD3-I スコアは ABCD2スコアに1週間以内の TIA(dual TIA)の病歴と Imaging としての DWI の急性期高信号、病側の内頸動脈の50%以上の狭窄を評価項目に加えたものです。

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投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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