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PIRA(Progression Independent of Relapse Activity)は、多発性硬化症(MS: Multiple Sclerosis)において重要な概念です。これは「再発とは無関係な進行」と訳され、MS患者の一部で、明確な再発がないにもかかわらず、神経障害が進行する現象を指します。

PIRAとは?

MSには主に「再発寛解型(RRMS)」と「進行型(SPMS・PPMS)」がありますが、PIRAはRRMSの段階でも発生することがあるとされます。これにより、以下のような事実が明らかになっています

再発(Relapse)とは無関係に病状が悪化するケースがある

EDSS(拡張障害重症度スケール:MSの重症度を表す)のスコアが徐々に悪化
慢性的な神経変性が関与している可能性が高い

炎症性脱髄と神経変性の詳しい因果関係は必ずしも解明されていないのですが、 病歴とともに主たる病態が炎症性脱髄から神経変性へと遷移し、 おそらくは患者ごとに異なる臨床的閾値を越えた際に、再発に依存しない身体障害の進行(PIRA)として顕在化すると考えられます。

PIRAの臨床的意義

以前はMSの進行は「再発によるもの」と考えられていましたが、PIRAの概念が登場したことで、進行のメカニズムが再発だけでは説明できないことが明確になりました。
抗炎症治療だけでは不十分であり、神経保護や再生を促す治療が求められています。
高齢の患者や、病気の罹患期間が長い患者でPIRAが起こりやすい傾向があるとされています。

PIRAと治療の関係

DMT(疾患修飾療法:Disease-Modifying Therapy)の効果を考える上で、PIRAによる進行を防ぐことが重要視されています。
高い効力(high efficacy)DMTオファツムマブ、ナタリズマブなどが、PIRAの進行を遅らせる可能性が指摘されています。

エスカレーションセラピー

できるだけ早くケシンプタなどの高い効力を持つ薬剤で治療を始める方法です

MSの治療目標は発症早期から脳や脊髄の組織を保護する、PROACTIVEな治療(前もって治療する)

ベースライン:インターフェロン

モデレート:フマル酸ジメチル(テクフィデラ)

ハイエフィカシー:ケシンプタ タイサブリ

NEDA:no evidence of disease activity

NEDA–3(再発,機能障害進行,MRI での新規病変がない状態)とはMSが安定している状態を指します

OCTがPIRAの評価に役立つ

OCT(光干渉断層撮影, Optical Coherence Tomography)は、多発性硬化症(MS)における神経変性の進行を評価するための有用なツールです。近年、PIRAの評価にもOCTが役立つ可能性が注目されています。

まとめ

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投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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