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2型糖尿病に適応のあるGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬(GLP-1 RA)は優れた体重減少効果があり、肥満症を有する2型糖尿病患者に広く用いられています。
GLP-1 受容体作動薬は、下部消化管(小腸)から分泌される GLP-1 の受容体を活性化する薬剤です。
膵β細胞膜上の GLP-1 受容体に結合し、血糖値が高い場合にのみインスリン分泌促進作用を発
揮するため、単独投与では低血糖発現リスクは低いです。
GLP-1 受容体作動薬には、血糖値に応じた膵β細胞からのインスリン分泌促進作用に加え、
グルカゴン分泌抑制や胃内容物排出抑制、食欲抑制など、多様な作用があります。
2023年4月, 強力な体重減少効果のあるGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)/GLP-1共受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ®)が2型糖尿病に対して使用可能となりました。マンジャロは従来のGLP-1 RAより更に強力なHbA1C改善効果と体重減少効果を有します。
さらに2023年11月 糖尿病の有無にかかわらない肥満症治療薬としてセマグルチド(ウゴービ®)が保険適用となりました。
欧米では 高用量のGLP-1 RAのみならずチルゼパチドも2023年11月に肥満症治療薬として承認されています。

(イーライリリー社サイトより引用)
チルゼパチド (マンジャロ®)
週1回の注射薬であり、グルカゴン様ペプチド – 1(glucagon-like peptide-1;GLP-1)受容体以外にグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropicpolypeptide;GIP)受容体にも作用します。
食事療法と運動療法を行っても十分に良好な血糖コントロールが得られない、インスリン非依存状態の患者が適応です。DPP-4 阻害薬との併用における有効性および安全性は確認されていません。

マンジャロによるHbA1Cおよび体重減少効果
チルゼパチド(マンジャロ)単独療法での長期投与試験(国内第Ⅲ相臨床試験)結果について

投与 52 週目の HbA1c のベースラインからの平均変化量は、5mg で-2.4%、10mg で-2.6%、15mg で-2.8%でした。
またHbA1c の低下と同時に用量依存的な体重減少もみられています。
国内第3相試験[GPGO試験(SURPASS J-mono)補遺]において、チルゼパチド群の体重減少量の75~80%は体脂肪の減少によるものでした。
52 週目でベースラインからの平均体重変化量は 5mg で-5.8kg、10mg で-8.5kg、15mg で-10.7kg でした。
マンジャロによる血圧および心拍数への影響
心拍数の増加と血圧の低下も認められています。収縮期血圧のベースラインから投与 52 週目までの変化量は、5mg で-6.5mmHg、10mg で-8.8mmHg、15mg で-11.0mmHg でした。また、脈拍数のベースラ
インから投与 52 週目までの変化量は、5mg で3.3bpm、10mg で 4.6bpm、15mg で 7.5bpm でした。
マンジャロの副作用
投与開始時から 4~6 週程度、あるいは増量時から 4~6 週程度をピークに、ほとんどが軽度ではあるものの、悪心・嘔吐、下痢、便秘が出現しやすくなります。ただし、用量依存性の傾向はありません。
消化器障害発現のリスクを回避するために、低用量から開始し、状態に応じて用量の漸増を行います。また、頻度は少ないものの急性膵炎が起こる可能性があります。膵炎の既往のある患者には慎重投与が必要です。まれに腸閉塞が起こる可能性もあります。腹部手術や腸閉塞の既往がある患者には慎重に投与する必要があります。
