目次
はじめに
2025年、国際頭痛学会(IHS)より片頭痛予防治療の目標に関する新たな提言が発表されました。
参考論文:
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/03331024251320608
本提言では、
「片頭痛が完全に消失する状態(Migraine freedom)」
「中等度〜重度頭痛の日数がごく少ない状態」
といった より高い治療到達点を目指すこと が推奨されています。
片頭痛コントロールの4段階分類(IHS提案)
治療成績は、次の4段階に分類されます。
■ 片頭痛消失(Migraine freedom)
・片頭痛 または 中等度〜重度頭痛の日が ゼロ
■ 最適コントロール(Optimal control)
・片頭痛 または 中等度〜重度頭痛
➡ 月 4日未満
■ 中等度コントロール(Modest control)
・片頭痛 または 中等度〜重度頭痛
➡ 月 4〜6日
■ 不十分なコントロール(Insufficient control)
・片頭痛 または 中等度〜重度頭痛
➡ 月 7日以上
現在は、
👉 片頭痛消失(Migraine freedom)
👉 最適なコントロール(Optimal control)
を 治療目標として積極的に目指す ことが提案されています。
慢性片頭痛とは
片頭痛は頭痛だけでなく、吐き気、光や音がつらい、体がだるい、集中できないなどの症状を伴い、
➡ 仕事
➡ 家事
➡ 学校
➡ 家族との時間
にも影響することがあります。
■ 慢性片頭痛の定義
以下の両方を満たす場合を「慢性片頭痛」 と呼びます。
・頭痛の日が 月15日以上
・そのうち 8日以上が片頭痛症状を伴う
慢性片頭痛では
発作回数が多い
身体的・精神的負担が大きい
「いつ起きるか」という不安が続きやすいため、
👉 頭痛がない日でも生活の質(QOL)が低下しやすい
ことがわかっています。
近年の治療進歩:CGRP標的治療
近年、片頭痛の発作に関わる物質「CGRP」の働きをおだやかにする治療が使われるようになってきました。モノクローナル抗体(注射薬) などがあり従来の治療より
✔ 効果
✔ 続けやすさ
が期待できる方が増えています。
片頭痛予防治療とは
片頭痛予防の目的は、発作の頻度、重症度、持続時間、病気による全体的負担を減らし、
👉 生活の質(QOL)を改善すること です。
■ 予防治療が推奨されるケース
次のいずれかに該当する場合、予防治療を考慮します。
・月 4日以上 の片頭痛がある場合
・月 2日以上でも、生活や仕事に強い支障がある場合
・急性期治療薬の使用が増えている場合
予防治療により急性期薬への依存を減らす、薬物乱用頭痛(MOH)を防ぐ、頭痛パターンを改善する
ことが期待されます。
■ 従来の予防治療との違い
従来の飲み薬では効果が出るまで 数週間〜数か月かかる、副作用のため中断されることがある
などの課題がありました。
一方、
✅ CGRP経路阻害薬では
数日〜数週間以内の改善(1週間以内に何らかの効果を実感することが多いとされる)
副作用が少ない
などが報告されています。