目次

シャルコー・マリー・トゥース病とは

Charcot–Marie–Tooth病(CMT)は遺伝性ニューロパチーの代表であり、四肢遠位筋優位の筋力低下、逆シャンパンボトル様下腿筋萎縮(大腿下1/3より遠位の萎縮)、遠位優位の感覚障害、凹足、槌状足趾などを特徴とし、原因遺伝子の数はCMT だけでも50以上、遺伝性運動性ニューロパチーや遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチーなどの近縁疾患を含めると80以上同定されており、遺伝的にも多様性のある疾患です。

CMT 古典的分類

1型 常染色体優性遺伝で神経伝導検査で脱髄型
2型 常染色体優性/劣性遺伝で神経伝導検査で軸索障害型

4型 常染色体劣性遺伝(脱髄型・軸索障害型の両者がある)

3型 CMT3は2歳以下で発症するDejerine-Sottas syndromeとほぼ同義ですが、CMT3の名称はあまり使用されていません。

2型では小脳失調がでるtypeもあります

神経伝導検査の分類

上肢正中神経の伝導速度が38m/sec以下になるのが脱髄型、それ以上は軸索型に分類されます。

ポイントはCMTでは神経伝導検査での速度低下がどの部位においても一様であり、神経伝導ブロックや時間的分散の増大がみられないこと(みられる場合は、後天的な脱髄を疑います)がCMTを示唆するポイントになります。

頻度の多いCMT ①CMT1A

最も多い遺伝子異常はPMP22Peripheral Myelin Protein 22)遺伝子の重複です。
FISH(fluorescence in situ hybridization)法によるPMP22遺伝子重複/欠失の確認が保険適応になっています。2コピーが正常、3コピー(重複)でCMT1A、 1コピー(欠失またはナンセンス変異)でHNPP(hereditary neuropathy with liability to pressure palsiesを発症します。

HNPPはCMTの類縁疾患として扱われ、PMP22のFISH検査で欠失またはナンセンス変異を伴います。発症年齢は15~20歳で疾痛を伴わない突然発症の運動麻痺を特徴とします。好発部位は
機械的圧迫をきたしやすい部位で、腓骨神経や尺骨神経などが多いです。機械的圧迫を契機に発症するため運動麻痺は非対称性もしくは局在性の分布を示します。発症/未発症に関わらず全例で軽度の神経伝導検査異常を呈するとされ、多くは正常の25~70%程度の運動感覚神経のMCV低下をきたします。

②CMT2A2 (MNF2遺伝子変異)

軸索型CMTの原因として最も頻度が高いのはMFN2Mitofusin 2)です。MFN2はミトコン
ドリア外膜に存在し、ミトコンドリアダイナミクスに関連しています。

③CMT1B (MPZ遺伝子変異)

myelin proteln zeroMPZ)遺伝子の突然変異で引き起こされます。MPZはミエリン化シュワン細胞においてのみ発現します。

④CMTX1 (GJB1遺伝子変異)

GJB1がコードするconnexin 32はギャップジャンクションを形成し、傍絞輪部構造の維持に関与しこの構造が跳躍伝導に不可欠です。

CMTXはCMTの中で2番目に多いサブタイプで、感染などを契機に急性脳症を呈することがあります。 

髄液所見

一部のCMTでは髄液タンパクが上昇します

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です