パーキンソン病治療の歴史

現在のパーキンソン病治療は薬物治療が中心になっています。

しかしながら1960年代にレボドパ製剤が登場するまでは、外科手術が多く行われていました。

パーキンソン病に対する外科治療の歴史は1930年代にまで遡ります。

外科手術という治療選択肢

長期に薬物療法を行っていると、薬の効果が不十分になってきたり、不随意運動や幻覚などの副作用が問題となってくる患者さんがいらっしゃいます。

1980年代にレボドパ長期投与による副作用が明らかになるにつれて、薬物療法の補完的治療として外科治療が再び注目されるようになりました。

1987年に脳深部刺激療法(deep brain stimulation: DBS)という新しい外科手術が登場しました。

DBSは脳の中に電極を、胸部に刺激発生装置を埋め込み、両者をリードでつないで、脳を電気刺激します。電極を入れるのは局所麻酔による手術で可能です。

DBSは一定の刺激を脳に与えられるので、24時間一定の効果が得られます。従来の外科治療に加え安全性が高く、刺激の強さも症状の進行にあわせて調節可能という点がメリットとして挙げられます。

DBSの欠点としては、異物挿入手術であることによる感染のリスク、電池交換の必要性、DBSシステムの故障のリスクなどがあります。

DBSの作用機序は完全には明らかにはなっていないのですが、ドパミン細胞の変性脱落の結果として生じた病的な神経活動のネットワークを修飾することで、症状の発現を抑制するもの、と考えられています。

DBS導入のタイミング

手術に伴う合併症のリスクなどを考慮すると、一般的には手術は70歳以下で行うことが望ましいとされます。

どの時点で手術を行うべきかは未だに意見が分かれるところです。一般的には発症10数年後に手術を考える方が多いですが、比較的早期のパーキンソン病でもDBSが有用であったという報告もあります。

適応はパーキンソン病のみ

DBSの適応はパーキンソン病のみであり、パーキンソン症候群は適応になりません(効きません)。

良い適応は、抗パーキンソン病薬を内服しても症状の日内変動が激しい、体が勝手に動くジスキネジアなどの副作用が強く薬を増量するのが難しいなど、患者さんが薬物療法では満足できない場合に、DBSが考慮されます。

認知症があるとDBSは施行できない

認知症や精神症状(薬物の副作用は除く)があるとDBSは施行できません。

DBSの副作用として認知機能低下やうつ症状出現などが報告されています。

またDBSはパーキンソン病を治す治療ではなく、症状をやわらげる治療です。手術を受けてもやがて病気は進行するので注意が必要です。

最近のDBS装置の進歩

現在は(電池式では無く)充電式のDBS装置が登場しています。

充電式では自身で週1回程度の充電(体外から充電器を当てて行う)を行う必要がありますが、電池寿命は20年にも及びます。

最近のDBS装置はMRI対応になっており、手術後でもMRI検査を行うことができるようになっています。