目次
腎臓の働き
近位尿細管・・・糸球体で濾過された物質の約70%を再吸収します
ヘンレループ・・・尿をいったん濃くして薄くする
遠位尿細管・・・NaやCa、K、再吸収の調整 (取捨選択)
集合管・・・水の再吸収の調整、Na再吸収、K排泄の仕上げ (微調整)
※大事なのは遠位尿細管と集合管のところ(作用する利尿薬が存在する)
※SGLT2阻害薬(近位尿細管に発現するをsodium/ glucose transporter 2を阻害)やURAT1阻害薬(ドチヌラド(ユリス®) 近位尿細管でURTA-1(urate transporter 1)を阻害して尿酸排泄を促進し、尿酸値を低下させる)は近位尿細管に効きますが、水・電解質に影響は少ないです。
物質にはチャネルやポンプ、トランスポーターを介さないと細胞膜を移動できないもの(Na、K、H2Oなど)と、自由に細胞膜を移動できるもの(尿素など)があります。
チャネルはフィルターであり、通り道はありますが、移動は濃度勾配で行います。ポンプはエネルギー(ATP)を使った能動輸送です。トランスポーターは毎回物質が結合し、他側へ排泄するので輸送が遅いです。チャネルはドアであるporeが全開可なので輸送が速いです。例えば周期性四肢麻痺はKチャネル異常と言われているので、あっという間に低K血症になりうるわけです。
近位尿細管が障害されると、再吸収されるべき物質が再吸収されなくなります(ファンコニ症候群)
小児では成長障害やくる病をきたし、成人も腎不全などになります。主な検査所見は、再吸収障害を反映して、汎アミノ酸尿、腎性糖尿、リン酸尿(低P血症)、Ⅱ型の尿細管アシドーシス(renal tubular acidosis: RTA)(HCO3–の再吸収障害)などです。原因はさまざまですが、近位尿細管が障害される病態ではすべてファンコニ症候群がおこりえます(多発性骨髄腫、シェーグレン症候群、薬剤性など)。
ヘンレのループは
下行脚では水だけを通す
上行脚ではNaClだけを通す
ので、その結果いったん尿が濃くなり、ヘンレのループの底で一番濃縮され、その後上に行くに従って段々薄くなります。
ヘンレループの下流をヘンレループの太い上行脚と呼びます。ここにループ利尿薬の作用点であるNa+–K+–2Cl– cotransporter type 2 (NKCC2)があり、Na、K、2Clの再吸収を行います。ここで、NKCC2によりできた電気的勾配でMg2+やCa2+が再吸収されます。
ループ利尿薬投与→低K血症、低Mg血症、低Ca血症が起こりうる、ということがポイントです。
更に下流の遠位尿細管では、サイアザイド系利尿薬が効くNaCl輸送体(Na+-Cl– cotransporter: NCC)でNaとClの再吸収を行います。サイアザイド系利尿薬はNCCをブロックすることによりNa、Clの再吸収を阻害し、体液量を減少させて血圧低下を起こします。サイアザイド系利尿薬では、循環血漿量の減少によりADHの分泌が促進され、自由水を再吸収して低Na血症をきたしやすいことに注意が必要です。NCCはCa、Mgの再吸収にも関わっているのですが、サイアザイド利尿薬投与で低Mg血症、高Ca血症(低Na血症も)が起こりえます。
アルドステロンはミネラルコルチコイド受容体を介して、ENaCを通したNa再吸収とROMK(renal outer medullary potasium channel)を通してKを排泄します(だからアルドステロンが高くなると、体液量増加で血圧上昇、K排泄で低K血症)
集合管に入るとADHが作用して自由水を再吸収して尿の濃さを決定します。ADHはアクアポリン2を管腔側の細胞膜に移動させます。アクアポリン2はチャンネルなので、開いてもその後の物質の移動は濃度勾配で決まるので、濃度勾配が大きい場合には早く(大量に)移動します。
参考文献
今回も以下の教科書を参考にしました。https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%81%A7%E3%82%82%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%B0%B4%E3%83%BB%E9%9B%BB%E8%A7%A3%E8%B3%AA-%E9%95%B7%E6%BE%A4-%E5%B0%86/dp/4498123883