ICLSとは

「ICLS」とは「Immediate Cardiac Life Support」の頭文字を取った略語です。突然の心停止に出会った時の最初の10分間の処置(チーム蘇生)を重要視するものです。

蘇生を始める必要性を判断し、行動に移す

突然倒れた人や反応のない人をみたら、直ちに心停止を疑うことで始まります。

BLS(一次救命処置)

胸骨圧迫と人工呼吸による心肺蘇生(CPR : cardiopulmonary resuscitation)とAED(Automated External Defibrillator 自動体外式除細動器)の使用が含まれます。

気道確保(頭部後屈あご先挙上)しても呼吸がわからないとき(胸と腹部の動きをみて、呼吸音を聞き呼吸を感じる)は直ちに胸骨圧迫を開始します(同時に頚動脈も触知)。しゃくりあげるような死戦期呼吸は心停止と判断します。胸骨の下半分の位置を、5cm以上(6cmを超えない)深さで、100〜120回/分の速さで圧迫します(ポイントは「真ん中を押す」心マというと左側を押してしまいます。)。圧迫後は胸壁に力がかからないようにして胸の位置をしっかり戻すと、圧迫が解除され心臓に血液が戻り冠動脈に血流が流れます(「胸骨圧迫の解除」圧迫と圧迫の間は胸壁に完全に力がかからないようにし(よりかからない/疲れてグニグニ押さないこと)。圧迫時は脳に、解除時は冠動脈に血液が行きます。)、しっかりゆるめます。

胸骨圧迫は10秒以上中断しないようにします(10秒手を離すと蘇生率は5%低下します)

胸骨圧迫と人工呼吸は 30:2で行います。気管挿管など高度な気道確保がされた場合には、6秒に 1回
(10回 /min)の割合で非同期(胸骨圧迫に関係なく)に換気を行います。酸素投与、高度な気道確保にかかわらず、CPR中の換気量の目安は胸郭の上がりが確認できる程度にします。
酸素投与にはバック・バルブ・マスクないしはジャクソンリースを用います。

ガイドライン2015では換気回数は10回/分とします。早すぎると予後が悪くなります(過換気になるとCO2が飛んで頭の血管が収縮してしまうためです。

AEDが到着したら速やかに装着します。電極パットの位置は右鎖骨下の前胸部(胸骨の右)と左下側胸部(左腋窩より足側、中腋下線あたり 脇の下5-8cmくらいで乳頭の斜め下)に貼付します。心臓を挟み込むのがポイントです。
https://www.aed-life.com/information/use/
電源を入れて、音声指示に従います。パッドを装着し、電気ショックの適応を解析します(解析中は離れる)。
適応があれば電気ショックを行います(ショックボタンを押す)。電気ショック施行後は、直ちに胸骨圧迫からCPRを再開します。電気ショックの適応がない場合には、直ちに胸骨圧迫からCPRを再開します。

ALS(二次救命措置)

BLS中に除細動器が到着したら直ちに心電図モニターを装着します(マニュアル除細動が一般的です)。心電図の評価は第Ⅱ誘導を原則とします。VF/無脈性VTであれば電気ショックを行います。二相性では120-200J(メーカー推奨の出力)で1回電気ショックを行います。電気ショック後は直ちに胸骨圧迫からCPRを再開します。2分ごとに心電図波形をチェックし、適応があれば電気ショックを行います。PEA/心静止であれば、CPRを継続し、2分間毎に心電図波形をチェックします。

心停止時の4つの心電図波形

VF:ventricular fibrillation 心室細動

pulseless VT:pulseless ventricular tachycardia 脈無し心室頻拍

PEA :pulseless electrical activity 無脈性電気活動

asystole: 心静止

除細動

マニュアル除細動器の使い方についてまとめます。

放電された電気エネルギーはパドルを通じて体内に入り、心筋細胞を一気に興奮させることで、
規則正しいリズムの興奮に戻します。

除細動器は、誰でもスムーズな操作ができるように次の 3 つの手順に統一されています。
①電源 ON とエネルギー設定
 まずは電源オン。ダイヤルを回して「モニタ」に設定すると、モニターの電源がオンになります。ダイヤルを回して電気エネルギーを設定します(電源スイッチはなく、ダイヤルを回すと同時に電源が入ります。)心室細動時の除細動の電気エネルギーの設定は、まず 200J に設定して除細動を試みて、不成功の場合は最大エネルギー(270 ~ 360J)に設定して除細動を行います。心房細動では、心室細動のときに比べて小さい電気エネルギーの設定で、150J くらいから除細動を試みることが一般的です。

電極を赤=右肩 黄=左肩 緑=左脇腹 に装着します。電気ショックのパドルを当てる際に妨げにならない部位に貼ります。誘導はⅡ誘導、感度は1倍にします。

②充電
 パドルにペーストを塗り、充電ボタンを押します(本体またはパドル)。充電完了には 5 ~ 8 秒程度かかります。パドルにペーストを塗るのは皮膚とパドルとの接触抵抗を小さくするためで、エコー用ゲルや心電図用クリームでは組成が異なり同様の効果が得られないため、かならず除細動専用のペーストを使用します。シート状のディスポーザブル導電性パッドを使用する場合もあります。

③放電
 パドルを右鎖骨下胸骨右縁上方(sternum)と左側胸部左乳頭側方(apex)に強い力で押しつけ、充電→放電ボタンを押します(充電直前に胸骨圧迫を中止)。放電ボタンは左右のパドルで同時に押さないと放電されません。パドルの位置は、電気エネルギーの流れが心臓を通るイメージを描き、2 つのパドルで心臓を挟むようにします。押しつける力が弱いとパドル部分に熱傷を起こす可能性があります。また、接触抵抗が大きく、電気エネルギーが心臓に十分に伝わらず、除細動が不成功に終わってしまう危険性もあるため、強い力でしっかりと押しつけます。
 また充電後、放電の必要性がなくなったときには、内部放電機能を使用します。コンデンサに蓄積させた電気エネルギーをパドルを介さずに除細動器内部で放電して消費する安全機能です。内部放電設定をしたとき以外にも、電源を OFF にしたときと、充電後に一定の時間が経過したとき(30 秒)には、内部放電が行われます。
同期とは、電極パドルから電気エネルギーが放電されるタイミングを心電図モニターのR波に合わせることです。VFおよび脈無しVTでは非同期モードを推奨です。

気道確保

気管チューブは、緊急時は内頚男性8mm、女性7mmが目安です。直線に近いホッケー型を用います。カフ用注射器(シリンジ)でカフを確認、キシロカインゼリーを塗布します。スタイレットを挿入しますが、スタイレットは先端が気管チューブから出ないようにします。

ポジショニングはスニッフィングポジション(仰臥位で枕の上に頭を乗せて、においをかぐために鼻を突き出した感じ)をとります。枕を入れて、外耳道孔と胸骨切痕を結んだ線をベッドと平行にします(口から気道までが一直線になります)

右手の母指と示指を交差させ、口角部に近い歯にあてて開口します(クロスフィンガー法;下顎は親指で押し上げる)視野確保のためできるだけ大きく開口します。

左手に喉頭鏡のハンドルを持ち、喉頭鏡を右口角から挿入し、舌を左側に圧迫します(舌全体をすくいあげる)。喉頭鏡のブレード先端を喉頭蓋谷舌根部と喉頭蓋のくぼみ)まですすめ喉頭展開を行います。ブレードを前上方に持ち上げると声門がみえます。(ポイントはテコの原理を使わない;喉頭鏡を回転させると上顎の門歯の損傷につながります。)

(喉頭鏡=ハンドル+取り外し可能なブレード型 左手の指側でハンドル下部を持って親指は立てる)

外部喉頭圧迫とは、輪状軟骨・甲状軟骨全体をまっすぐ下に押すことでかなり視野がよくなります。

声門が直視できれば、声帯と声帯の間(=声門 V字型の披裂部の上を通過させる 下側が食道)にチューブ先端を通します。チューブ先端についたマーカ-(黒いライン;声帯マーカ-)が声門を通過すれば操作は完了です。チューブは右口角から口腔へ、手関節を少し背屈し45度傾けた状態で保持します。ブレードがないのでチューブをすすめやすいです。

スタイレット抜去後カフを膨らませます(通常3-8ml空気注入)

挿管後は5点聴診法→前胸部二カ所、側胸部二カ所、心窩部を聴診(水泡音 ゴボゴボ音 なし)します。左右の胸郭が左右均等に挙上していることも確認します。

バイトブロックはチューブの左側につば部分のくぼみを合わせるように挿入します。

EtCO2カプノメトリー(色調で視る)、カプノグラフィー(波形で視る)などの補助器具を用いて挿管を確認することもあります。。

蘇生に使用する薬剤

①血管収縮薬 アドレナリン

心停止時には波形にかかわらず、血管収縮薬としてアドレナリン標準用量(成人は1mg/1回)を投与します。3-5分毎に追加投与して良いが、ALSのアルゴリズムでは2分ごとに心電図チェックが入るため、2サイクル毎に投与するとちょうど良いです。
心電図チェック時に心停止が継続していれば直ちに投与して良いですが、電気ショックの適応であった場合は電気ショックを優先し、妨げにならないタイミングでアドレナリンを投与します。

②抗不整脈薬

アドレナリン投与時の次の心電図チェック時にVF/VTが継続していれば、抗不整脈薬の投与を考慮します。第1選択薬はアミオダロン(アンカロン®)です。(代替え薬がニフェカラント(シンビット®)・リドカイン)

・アミオダロン2A(300mg)を5%ブドウ糖20mlで溶解してボーラス投与。効果が認められないときには150mgを追加投与します(クラスⅢ群の抗不整脈薬)

・ニフェカラント 0.3mg/kgでivします(クラスⅢ群の抗不整脈薬)

・リドカイン1-1.5mg/kgでivします(クラスⅠb群の抗不整脈薬)

鎮痛薬(挿管時に使用)

ドルミカム(一般名ミダゾラム)
BZ系 10mg/2ml/A
最も使われる。通常1-2mgずつ静注し、1-2分待って効果を確認し、不十分なら1-2mgずつ追加静注します(0.4mlだと2mg)総投与量は1-5mg

セルシン(一般名ジアゼパム)
10mg/2ml/A
推奨量は2mgずつ(0.4ml)総投与量は2-10mg

・ペンタジン(一般名ジアゼパム)
ドルミカムと併用・除痛目的
呼吸抑制も強い 15mg/1ml/A
5-7.5mgずつ静注(0.5A)総投与量は5-15mg

参考文献

https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758118002/

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投稿者

古田 夏海

群馬県内の総合病院で脳神経内科医として勤務しています。

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