目次

現在承認されているALSの進行抑制薬は①リルゾール(リルテック®)100mg/日内服と②エダラボン(ラジカット®)点滴です。リルゾールは1999年に発売され、3カ月程度生存期間を延長することが示されています。エダラボンのALSに対する使用は2015年に承認され、60mgを60分かけて1日1回点滴静注します。14日間連日投与後に14日間休薬し、その後は14日間のうち10日間の投与と14日間の休薬を繰り返します。エダラボンの6か月間の投与により、重症度スケールであるALSFRS-Rの低下を2カ月程度遅らせることが示されています。リルゾールもエダラボンも呼吸筋障害が進行したケースでは有効性が示されていません

リルテック®

グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質であり、グルタミン酸の過剰により興奮性細胞死を生じます。そのため過剰なグルタミン酸を抑制する抗グルタミン酸薬としてリルゾール(リルテック)が開発されました。
副作用は肝機能障害・間質性肺炎(KL-6をチェックします)があります。
数多くの臨床試験が行われた中で、リルゾールのみが唯一生存期間の延長効果(平均2~3カ月)
を認め,適応承認薬となっています。一方で、筋力や運動能力に対する改善効果は認められておらず努力性肺活量が60%未満に低下している場合には投与を控えることを検討することとされています。

ラジカット®

酸化ストレスは様々な疾患への関与が示唆されています。脳梗塞急性期にも酸化ストレスが症状の進
展に強く関与するため、酸化ストレスを抑制する脳梗塞治療薬としてエダラボン(ラジカット)が開
発されました。酸化ストレスはALSにおいても病因の一つであることが知られています。
本来脳梗塞の治療薬として承認されていたフリーラジカルスカベンジャー(フリーラジカル消去剤)であるエダラボン(ラジカット)がALSに対して2015年追加適応が承認となりました。
両者の投与法の違いは

①脳梗塞 1日2回 30mg×2 30分で投与
②ALS 1日1回 60mg×1 60分で投与

24週の試験期間においてプラセボ群と比較して改定ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)の有意な改善を認めたことから承認に至りましたが、これは第Ⅲ相試験において、効果が期待できる比較的軽症な患者層(ALS重症度分類1・2度努力性肺活量80%以上)を抽出して行った試験が対象となっています。

肝細胞増殖因子(HGF)

HGF(肝細胞増殖因子hepatocyte growth factor)は内因性の神経保護因子であり、運動ニュー
ロン、活性化アストロサイトに受容体があり、神経細胞保護と軸索形成促進によってALSへの治療効果が期待されます。HGFはカテーテルによって脊髄腔内の中枢神経に投与されます。東北大学および大阪大学附属病院で治験が行われています。
HGFを脊髄腔内に投与するためには入院によるカテーテル埋め込み手術が必要となります。

ペランパネル(フィコンパ®)

ALSの9割以上は孤発性であり,その病態にはAMPA受容体を介したCa流入の関与が想定されています。Perampanelは既存の治療薬とは異なり、孤発性 ALS の病態を阻止することが期待されます。Perampanelは経口の抗てんかん薬として市販されています(フィコンパ®)。

グルタミン酸を介した上位運動ニューロンから下位運動ニューロンへの神経伝達において、グルタミ
ン酸を受け取る受容体のひとつがAMPA受容体です。ALSの下位運動ニューロンのAMPA受容体で
はADAR2という酵素のはたらきが低下することにより、細胞内へのカルシウムの流入量が増えてしま
い、運動ニューロンにダメージを起こしてALSが進行すると考えられています。ペランパネルは
AMPA受容体に作用し、異常なカルシウム流入をブロックする作用を持つため、ALSに対する有効性
が期待されています。

ロピニロール(レキップCR錠®)

慶應義塾大学神経内科においてiPS細胞技術を駆使して既存薬スクリーニングの結果見いだされたのが抗パーキンソン病約であるropiniroleです。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するiPS細胞創薬に基づいた医師主導治験を開始 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (amed.go.jp)

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です