PEG(胃瘻)

胃痩は体表から胃に穴をあけ、直接胃の中に栄養を注入する方法です。栄養注入は白宅で患者さんやそのご家族が行うことができます。胃痩造設後も入浴などの日常生活に支障はありません。嚥下障害が軽度な時期には、経口摂取と併用し、食べる楽しみを残しつつ、必要なエネルギーを摂取することが可能です。
胃痩のデメリットとして、造設には上部消化管内視鏡による30分程度の手術が必要です。胃痩の合併症は造設時およびその後一か月間に起こりやすいとされています。胃痩造設時は、出血・腹膜炎・気腹などの合併症が起こりえます。気腹は腹腔内遊離ガスがみられることで、少量であれば問題はありません。

また、呼吸機能が低下しているALS患者では胃痩造設時に呼吸不全が悪化することがあります呼吸不全悪化のリスクは、%努力性肺活量(%FVC)が50%以下で低リスク、30~50%で中リスク、30%以下で高リスクとされています。(これは腹筋を使って腹式呼吸をする人がALSでは多いためです)
胃痩造設後、胃痩カテーテルが抜けるトラブルは起こりえますが、頻度は高くありません。胃痩部周囲に肉芽が盛り上がることや痩孔周囲炎などの皮膚異常が現れることがあります。胃痩カテーテルは半年に一回程度で交換する必要があります。

BiPAP

2015年に改訂されたNPPV(非侵襲的陽圧換気(Non-invasivepositive pressure ventilation;NPPV)ガイドライン第2版において、神経筋疾患による慢性呼吸不全に対し、第一選択としてNPPVを使用すべきであると推奨されています。ALSの補助換気においてもNPPVが使用されることが多いです。
しかしながら球麻痺症状の進行から喉咽頭の機能低下がみられる場合には誤嚥や窒息を招くリスクが高く、流涎・喀痰多いと不向きな場合もあり、早期導入が必ずしも良いとは限らないとされます。
実際には患者さんの呼吸苦などの自覚症状が導入に際し重要視されることが多いですが、%VC=60%を切ったらNPPVの練習を開始します。

 NPPVで使用されている人工呼吸器には従量式と従圧式に大別されますが、現在日本では
従圧式人工呼吸器が使用されていることがほとんどです。NPPV専用機種の多くが、吸気時には吸
気圧(inspiratory positive airway pressure:IPAP
)、呼気時には呼気圧(expiratory positive airwaypressure:EPAP)をかけるBilevel PAP方式(商品名BiPAP)を採用しています。

BiPAP初回導入時は装着時間にはこだわらず、マスクフィッテングや器械からの送気を患者に体験してもらうことを中心に行います。マスクには、鼻マスクと鼻口マスクが主に使用されています。
鼻マスクは快適性に優れてはいるが、睡眠中の開口エアリークのコントロールや、呼吸筋麻痺が進行
した際にIPAPを増やす際には鼻口マスクの方が適していると考えられています。
患者さんが2時間程度不快を感じずBiPAP装着が可能となったら、夜間就寝時の装着を開始します。神経筋疾患患者は睡眠時に低換気に陥りやすく、これは呼吸補助筋の筋活動低下あるいは横隔膜活動が増加しないことがあげられます。すなわち、呼吸筋、特に横隔膜の機能不全を伴うALS患者の呼吸
障害は睡眠の影響が大きく、通常であればまず夜間睡眠中の装着を目標とします。

BiPAPでは自発呼吸優先と強制換気挿入の2つのモードがあります。
・Sモード:自発呼吸のみを補助する。IPAPとEPAPの時間と呼吸数は患者の自発呼吸に依存する。
・Tモード:あらかじめ設定した分時呼吸数とIPAP時間に従って調節換気を行う。

設定はIPAP 8 cmH2O、EPAP 2~4 cmH2O で開始し、1 回換気量をみながら IPAPを徐々に上げます。当初は IPAP が10~12 cmH2Oで維持可能ですが、呼吸不全の進行とともに16~18cmH2O へ上げることが必要となる症例が多いです。

モードは多くの場合では、初回導入時から、自発呼吸+強制換気の混合モード(S/Tモード)から開始することが多いです。S/Tモードは:自発呼吸に応じてSモードを行いますが、一定時間に自発呼吸が検出されないときに、バックアップとしてIPAPが供給されるモードです。

モードの他にも呼吸回数、吸気時間、ライズタイム、トリガー感度の設定も重要です。ALSでは自動調節モードのなかでも目標換気量を維持するよう自動調整するvolume assured pressure support(VAPS)モードを併用することが多いです。VAPSモードは、設定された目標の1回換気量を維持する
ために、事前に設定された最大IPAPから最小IPAPの範囲内でIPAPを自動調整します。VAPSモードを使用する際の注意点としては、設定した最大IPAPにおいても目標とする一回換気量に到達しなければ十分な換気量を得ることが難しいため、患者の自覚症状や呼吸状態を評価しながら、IPAPを段階的にあげていく必要があります。

(参考)IPAPとEPAPの差をプレッシャーサポートといい、吸気の際にプレッシャーサポートをかけることで患者の吸気仕事量が軽減し、肺胞換気量の増加によって呼吸筋疲労も軽減され、結果として呼吸状態の改善につながります。

NPPVが限界または使用継続が困難になったときに気管切開下陽圧換気(Tracheal positive pressure ventilation;TPPV)に変更することも考慮します。
ALSで呼吸不全をきたしたTPPVを選択する患者は全国で 3 割以下とされ,約 7 割の患者は人工呼吸器装着をせずに亡くなっているとされます。

気管切開

呼吸不全の徴候に加え、気道内分泌物が増加したり、誤嚥性肺炎を繰り返したり、または NPPVが24時間必要となったら気管切開による人工呼吸器装着を検討する時期です。嚥下障害が先行し、気道内への唾液の落下が多く、気管内から分泌物の吸引が頻回に必要になった場合は、呼吸機能低下がなくても気管切開が必要になります。

気管切開の方法は

①従来の気管切開
気管切開のみを行いカニューレを装着する方法です。局所麻酔下でも手術可能で、手術時間が短いのが特徴です。球麻痺が進行すると、唾液が気道内へ落下してカニューレ挿入部の気管切開孔から流出したり、下気道への落下で嚥下性肺炎をきたしたりすることがあり、気管からの痰の吸引回数が多くなります。
②気管食道分離手術
気管切開とともに気管入口の閉鎖や喉頭摘出を行う手術です。長所として、咽頭筋が保たれていれば、誤嚥の心配なく食事の経口摂取を行うことが可能です。気管内への分泌物落下がないため、誤嚥性肺炎をきたすことがなく、気管カニューレ内からの吸引回数は少ないです。短所としては、全身麻酔が必要で手術時間が長いことが必要です。手術直後から声帯を使っての発声は全くできなくなります。全麻下で手術を行った場合は、抜管できなくなるriskもあります

NPPV は 行うが気管切開を行わない 場 合、呼吸不全によりPCO2が上昇してくる場合は呼吸苦の訴えが少ないですが、努力呼吸が続く場合は呼吸苦が強くなります。対症療法として酸素投与量の増量や、モルヒネ投与で対応します。 

カフアシスト 機械的排痰補助装置(mechanical insufflation exsufflation : MI-E)

カフアシストは、気道に陽圧を加えた後に急速に陰圧にシフトする(切り替える)ことで、気道に高い呼気流速を生じさせ、気管支や肺に貯留した分泌物の排出を助けます。咳の代用となり(擬似的な咳)、中枢気道(気管の第 4〜5 分岐部よりも中枢側)に貯留した分泌物を効果的に排出します。
2010年に在宅での使用が保険適応となり広く用いられています。
マスクでも気管カニューレへの接続によっても使用でき、NPPV・TPPV のいずれの実施中でも使用可能です。

おおよその導入基準として

①%VC<50%

②Cough Peak Flow(以下CPF)が1601/min以下の場合、自力にて疾を排出することが
できないため、カフアシストを利用した咳の補助が有用とされています。

通常は,
陽圧(吸気)1.5から3秒
陰圧(呼気)1.5から3秒
休止時間0~1秒
(40cmH2O/-40cmH2Oの圧なら、外傷は起こりにくいとされています)
過換気を防ぐため、5サイクルまでの繰り返しを目安とします。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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