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「片頭痛と中枢感作(central sensitization)」は、近年の頭痛研究において非常に重要なテーマです。
片頭痛の慢性化や難治化に関与しており、治療方針にも影響を与える概念です。
🧠 中枢感作とは?
中枢神経(脊髄・脳)の痛みに対する過敏状態です。
・通常なら痛くない刺激でも痛みとして感じる(アロディニア)
・軽い痛み刺激でも強く感じる(痛覚過敏)
・刺激がなくなっても痛みが続く
慢性痛や線維筋痛症、片頭痛など多くの疾患に関与しています。

💥 片頭痛における中枢感作の役割
- 発作の進行と関連
片頭痛発作が進行すると、脳幹(三叉神経核)や視床に感作が起こる(三叉神経や視床の活動増加/三叉神経血管経路の活性化)
感作が進むと、光・音・におい・動きなどへの過敏(感覚過敏)が出現
発作中の皮膚アロディニア(髪が触れても痛いなど)は中枢感作の代表例

- 慢性片頭痛との関連
中枢感作が持続することで、片頭痛が慢性化(月15日以上の頭痛)しやすくなる
→頭痛の閾値が下がり、軽微な刺激で頻繁に片頭痛が誘発される
- 片頭痛間欠期の症状にも関与
発作がない日でも「首こり」「倦怠感」「注意力低下」などが見られる背景には、中枢感作の持続が関与しているとされる(MIBS-4高値とも関係)
🧪 症状の具体例(中枢感作が疑われるサイン)
頭皮が痛い(皮膚アロディニア): 感作の進行
首や肩が異常にこる: 頚部筋膜の感作
光・音・匂いへの過敏 :感覚野の過活動
発作がない日もだるい :持続する感作と視床の関与
→頭痛が無くても中枢感作は続いている状態があります
💊 中枢感作への対応(治療戦略)
急性期治療の早期介入 →トリプタンなどで感作が進む前に抑える(頭痛が起こって1時間以内に内服すると2時間に頭痛が消える)
予防療法 エムガルティ、デパケン、アミトリプチリン等(ミグシスは妊娠中は禁忌)
非薬物療法 認知行動療法、睡眠・ストレス管理など
✅ まとめ
中枢感作は片頭痛の進行・慢性化・治療抵抗性に深く関与しています。
頭痛の頻度が多いと中枢感作(脳が痛みに過敏になっている)が進んでしまいます
痛みの閾値が下がることで、片頭痛が発作期だけでなく日常生活全体に影響を与えるため、早期の予防治療と包括的アプローチが重要です。
エムガルティは中枢感作を改善させる
エムガルティはCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経伝達物質の働きを抑制することで、片頭痛発作の予防効果を発揮します。CGRPは三叉神経系で過剰に分泌されることで頭痛や痛みの感受性を高め、中枢感作の一因となります。
脱感作(中枢感作)には時間がかかる
エムガルティが効いてくるのには時間がかかるケースもあります
慢性化する前に(ミドルフリークエンシーの反復性片頭痛:月4-8回程度の頭痛)、早めの投与がよいターゲットになります
