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パーキンソン病とは
パーキンソン病は、脳の神経細胞が徐々に減少することで運動機能に支障をきたす進行性の神経難病です。震えや筋肉のこわばり、動作の遅れといった運動症状に加え、便秘や嗅覚低下、睡眠障害、気分の落ち込みなど非運動症状も見られます。
難病医療費助成制度の概要
日本では、パーキンソン病を含む341の疾患が「指定難病」に認定されており、医療費助成の対象となります。これは、長期療養による経済的負担を軽減する目的で設けられた制度です。
自己負担上限額(月額)について
所得に応じた階層区分があり、自己負担は最大でも月額30,000円程度で抑えられます。特に「高額かつ長期」や「人工呼吸器等装着者」にはさらに低い上限が設けられています。
階層区分 | 市町村民税の状況 | 年収目安(夫婦2人世帯) | 一般 | 高額かつ長期※1 | 人工呼吸器等装着者 |
---|---|---|---|---|---|
生活保護 | 非課税 | ― | 0円 | 0円 | 0円 |
低所得 I | 非課税(年収 ~80万円) | ~80万円 | 2,500円 | 2,500円 | 2,500円 |
低所得 II | 非課税(年収 80万円超) | 80万円超~160万円 | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
一般所得 I | 課税(7.1万円未満) | 約160~370万円 | 10,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
一般所得 II | 課税(7.1万円~25.1万円未満) | 約370~810万円 | 20,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
上位所得 | 課税(25.1万円以上) | 約810万円~ | 30,000円 | 20,000円 | 20,000円 |
- ※1:「高額かつ長期」とは、医療費総額が月額5万円超の月が年間6回以上ある場合を指します(自己負担割合2割の場合、自己負担1万円超の月が6回以上)。
- 入院時の食費は助成対象外ですが、低所得者Ⅱでは1食230円、低所得者Ⅰでは110円、生活保護世帯では無料になる場合があります
- 「人工呼吸器等装着者」には、特に低額の自己負担上限が設定されています。
医療費助成の対象となる条件
1)重症度基準
「ホーン・ヤール重症度分類」で3度以上、かつ「生活機能障害度」で2度以上である場合、医療費助成の対象になります。医師が過去6か月間の最も悪い状態を評価して判定します。
2)軽症高額該当
症状が軽度(1)の重症度基準に該当しない場合)でも、医療費が高額(月33,330円以上)が12か月内に3回以上ある場合は、助成対象になります。これを「軽症者の特例」と呼びます。
医療費助成の申請方法
必要書類
- 特定医療費支給認定申請書
- 臨床調査個人票(診断書)
- 世帯全員分の住民票と市町村民税課税証明書
- 公的医療保険の保険証コピー
- その他、必要に応じて追加書類
診断書は「難病指定医」のみが作成できます。
申請から受給までの流れ
申請後、医療受給者証の交付までに約3か月かかります。認定されれば、その期間に支払った医療費の払い戻し請求も可能です。
制度改正ポイント(2023年10月以降)
- 助成の開始日は「重症度分類を満たしていると診断された日」から。(申請日からではない)
- 軽症高額対象者は「その基準を満たした日の翌日」から。
- やむを得ない事情がある場合、申請日から最大3か月前まで遡及が可能です。
患者と家族への支援
医療費助成により治療の選択肢が広がり、就労支援や職業訓練、リハビリテーションの機会も得られます。これは単なる医療支援にとどまらず、生活の質全体を支える制度です。
まとめ
パーキンソン病で難病医療費助成制度の認定を受けると、医療費の自己負担割合は通常の3割から2割に引き下げられます。
この制度は、指定難病に該当する患者さんの経済的負担を軽減するために設けられたもので、医療保険上で3割負担となっている方が対象です。もともと1割または2割負担の方は、負担割合に変更はありません。
さらに、所得に応じて月ごとの自己負担上限額が設定されており、同月内の医療等に係る費用(複数の医療機関、薬局等で受けたものを合算)について、当該上限額を超えた自己負担額は全額助成されます。
この助成制度により、パーキンソン病患者さんの医療費負担が軽減され、継続的な治療や療養がしやすくなります。