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ふるえが出る病気はたくさんある
パーキンソン病のふるえ(振戦)は、何もしないでじっとしている「静止時(安静時)」に現れます。初発症状の約半数が静止時振戦であり、8割で初発か経過中に振戦を経験します。
(動作時・姿勢時の振戦を同時に認めることも少なくありません)
パーキンソン病の手の振戦は1秒間に5回程度(=5Hz)のゆったりとした振戦で、動作を行うときには振戦は軽度消失するのが特徴です。
しかしながら、ふるえが出る病気は他にもたくさんあるので、ふるえがあるだけでパーキンソン病であると診断することはできません。
鑑別に問題となることが多いのが本態性振戦(essential tremor)です。
パーキンソン病のふるえは、本態性振戦のように一定の姿勢をとったときにただちに出現する振戦もありますが、一定の潜時(1~47秒)の後に安静時振戦と同様の周波数で(4~6Hz)再度発現する特徴を示す振戦があり、これを“re-emergent tremor”と呼びます(後述)。パーキンソン病のふるえと本態性振戦の鑑別に有用です。
本態性振戦
本態性振戦は、潜時なしに発現する振戦で,精神的な緊張やストレス、寒冷などにより増幅する傾向があります。パーキンソン病のごく初期には、動作時振戦や姿勢時振戦のみが観察されることもあり、本態性振戦との鑑別は困難なことが少なくないです。
パーキンソン病のふるえとの鑑別点として、本態性振戦では頸部や声帯などにも振戦がみられる
こと、首を左右に振る振戦(no-no-type)が多いこと、両側性であることがあげられます。
パーキンソン病の手のふるえ(re-emergent tremor)
re-emergent tremorとは、両手を前方に挙上すると一旦手のふるえが止まり、10秒程度のタイムラグ(潜時)を経て一旦消えた手のふるえ(tremor)が再び強く現れる(re-emergent)ことがあり、パーキンソン病を示唆するとされます。
手以外にもre-emergent tremorはみられる
参考;少し応用的な動画ですが、下顎のre-emergent tremorの例です。
パーキンソン病で下顎が震えている患者さんが、舌圧子を口にすると10秒程度ふるえが止まった後、再びふるえ始めます。随意運動で一時的に安静時振戦が止まる、re-emergent tremorは下顎にもあらわれることがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=WXVNfeAHlcc
ふるえの治療
パーキンソン病の振戦に対する治療は、内科的な治療(内服)と外科的治療(深部脳刺激療法 deep brain stimulation:DBS)があります。
内服薬としては
→抗パーキンソン病薬が治療の基本です
L-dopaやアゴニストを投与します。
トリヘキシフェニジル(アーテンⓇ)などの抗コリン薬が振戦の強い症例に用いられることがありますが、高齢者では認知機能が悪化しうるために注意が必要です。
姿勢時振戦や安静時振戦には
・クロナゼパム(リボトリールⓇ・ランドセンⓇ)/プリミドンなどの抗てんかん薬
・プロプラノロール(インデラルⓇ)/アロチノロールなどのβ遮断薬が使用されます。
まとめ
パーキンソン病の手のふるえは、安静時にふるえるが何かやると止まる(例 手を前に上げる)
10秒程度止まった後、次第に激しく止まる
re-emergent=姿勢をとることにより、安静時振戦が再び出てくる