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MIBG心筋シンチグラフィ

心臓交感神経機能シンチグラフィーという検査は、静脈に123I-MIBGという物質(メタヨードベンジルグアニジン;ヨードで標識、ノルエピネフリン=ノルアドレナリンと良く似た物質(アナログと言います、構造は少し異なりますが同じ作用を持ちます))を注射し、15分後(早期像)と3時間後(後期像)に胸部の撮影を行い、心臓の交感神経(節後線維)に取り込まれて心臓の影が映るかどうかを確認します。123I-MIBGは神経伝達物質であるノルアドレナリンと同様な動態を示します。パーキンソン病の場合はMIBGが交感神経から取り込まれず、心臓の影が映りません。

Medical Practice 35(3): 385-390, 2018より引用

ちなみに早期像は交感神経の分布、後期像は神経活動の指標とされ、どちらの像も心臓交感神経系のマーカーとなります。

パーキンソン病の病歴が長ければ長いほど、MIBGの取り込み低下は進みますが、初期は明らかではないこともあります。

参考まで日本心臓核医学会のHPを紹介します。(「MIBGの応用」)
http://www.jsnc.org/p-jsnc-seminar/007/2015/1128

DaT scan

初期でもパーキンソン病の鑑別に役立つ検査にDaT scan(ダットスキャン)という検査があります。
(ダットスキャン検査はパーキンソン病発症のかなり前から異常が出ることが知られており、prodromal markerとして良いとされます。)

ダットスキャン検査は、放射線医薬品である「123Iイオフルパン(商品名ダットスキャン)」を使った核医学検査です。(安全性は確立しています)

このダットスキャンを静脈に注射し、3時間後に薬が取り込まれたら脳の撮影を行います。ダットスキャンは黒質線条体ドパミン神経節前末端(黒質~線条体のdopamine神経終末に結合)に存在するドパミントランスポーターに結合します。(DaTとはdopamine transporterのことです)

PROGRESS IN MEDICINE 34(2): 217-222, 2014より引用

この検査は線条体における集積をみていますが、黒質におけるドパミン産生神経細胞の密度と良く相関することが知られており、実質的に黒質におけるドパミンニューロン密度を推定することができます

PROGRESS IN MEDICINE 34(2): 217-222, 2014より引用

健康な脳の人だと、取り込んだ薬が三日月のような形(「カンマ(コンマ)型」)で映ります。(線条体の形)(下図のA)

異常があると、取り込んだ薬がまるで「点」(ドット型)のように画像に映ります。(パーキンソン病では背外側(被殻後方)から集積低下します)

Nippon Rinsho 76(4) 2018より引用

この検査で注意すべき点は、中脳の黒質変性をきたす他の変性疾患(多系統萎縮症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症)でも取り込みが低下することがある点です。

例として、進行性核上性麻痺(PSP)では背景レベルまで集積が低下した「burst appearance」(線条体全体で低下しほぼ無集積)になることがあります。

一方、原則として脳血管性パーキンソニズムと薬剤性パーキンソニズムはDaT-SCAN検査では線条体の集積低下はみられないとされます。
脳血管性パーキンソニズムはラクナ梗塞を反映して形がいびつになることがあるので、SBR値だけではなく視覚評価も重要です。

参考までに日本メジフィジックス株式会社の一般の方向けのHPを紹介します
 https://www.nmp.co.jp/public/dat/index.html

パーキンソン病でもDaT-SCAN正常のこともある(SWEDDs)

PDの運動症状時には線条体黒質細胞が50%低下し、ドパミン濃度に至っては20%まで低下していると言われています。このようにパーキンソン病の患者さんではかなり早期からDaT-SCANの集積低下がみられることが知られています(発症5年前~集積低下)。
一方、パーキンソン症状をみとめている症例の4-15%でDaT-SCANが正常であるといわれ、SWEDDs(scans without evidence of dopaminergic deficits)と呼ばれています。