目次

レボドパ・カルビドパ合剤ジェル腸内持続療法(LCIG)とは

パーキンソン病は治療開始してしばらくは、薬の効果があり、うまく症状をコントロールすることができるハネムーン期と呼ばれます。しかし、治療期間が長くなってくると(治療5~10年)、薬はよく効くものの、効果が長続きせずに3~4時間おきに内服をしないと薬が切れてしまう状態(ウェアリングオフ現象)や、薬が効きすぎてしまい、体がくねくね意図せずに動いてしまう状態(ジスキネジア)といった運動合併症が生じることがあります。

このように進行期パーキンソン病における最大の問題点は運動症状の日内変動(ウエアリングオフ)やジスキネジアといえます。

ウェアリングオフやジスキネジアといった運動合併症に対しては、これまで内服薬の調整や、貼り薬の使用、脳深部刺激療法(DBS)という外科的治療法などが治療の選択肢でしたが、2016年の9月から、「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG(levodopa carbidopa intestinal gel); デュオドーパ®)」という新しい治療法を本邦でも行うことが可能となりました。これは、内視鏡を使用して胃ろうを造設し、空腸までチューブを挿入します。そのチューブに体外式(携帯式)のポンプをつなぎ、レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に投与するデバイス補助療法の一つです。

(機械のポンプの重さは約500g程度です。肩や腰にかけて持ち運べます。お風呂に入るときにはポンプを取り外すこともできます。)

進行期では、運動合併症の治療のために少量のレボドパ製剤を何回にも分けて内服するという方法を選択することがありますが、内服回数を増やしても、血中濃度の「山」と「谷」ができてしまうという問題があります。

LCIGはポンプを用いて一定速度で薬を投与し続けるので、血中濃度の「山」と「谷」がなくなり、血中濃度を一定に保つことができるため、ウェアリングオフ症状を改善させ、ジスキネジアの発現をおさえることができます。運動合併症に対する効果が高い治療法です。

主な合併症には、胃ろうに伴う感染やチューブの挿入に伴うトラブル等があります。チューブ関連のトラブルが主でパーキンソン病に関連する副作用は少ないとされます。

またレボドパ投与下でビタミンB12欠乏ニューロパチーを生ずることがあり、予防的にビタミンB12を投与することがあります。

LCIG療法の実際

LCIGカセットは100mlにレボドパ2000mgを含有したゲル状懸濁液で(20mg/ml)、冷蔵庫保存であるため、LCIGのカセットは投与開始20分前に室温にしておきます。

LCIGの総投与時間は16時間で、我が国では夜間投与は認められていません。

症例によっては夜間のオフに対しL-dopaを経口投与することがあります。

基本的には16時間を通して同一の流量ですが、朝の投与開始時およびオフ発現時にはボーラス投与(1-2ml:レボドパとして20-40mg)を行います。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です