目次
パーキンソン病は脳のドーパミンが減る
パーキンソン病はロンドンの医師であるジェームス・パーキンソンDrの論文(1817年)に由来します。脳の神経伝達物質であるドーパミンが減ることで発症することが知られています。(パーキンソン病の症状については1500年代にレオナルドダヴィンチも記載していたようです)
ドーパミン(ドパミン)は体をスムーズに動かすため、脳からの指令を筋肉に伝える物質です。中脳の黒質という組織で作られます。1957年にArvid Carlssonにより単にノルアドレナリンの前駆物質ではなく、神経伝達物質であることが示されました。黒質の神経細胞が壊れることで、ドーパミンの量が減ることでパーキンソン病が発症します。パーキンソン症状が発症した段階で、すでに黒質の神経細胞は約半数程度まで脱落していることが知られています。
20才を超えると加齢により黒質の神経細胞が壊れることが知られています。パーキンソン病の患者さんはより早く黒質の神経細胞が減ってしまいます。
神経伝達物質であるドーパミンが欠乏することで体がスムーズに動かなくなる
パーキンソン病の四大症状
より早く神経細胞が減ってしまう原因は「ミトコンドリアの障害」「酸化ストレス」など
なぜ早く減ってしまうかは明らかになっていないのですが、いくつかの仮説があります。遺伝性の要素があるものは10%未満といわれており、発症の主な原因はその他の因子であると考えられています。代表的な因子として「ミトコンドリアの機能異常」「酸化ストレス」「異常蛋白質の蓄積」などが考えられています。
「ミトコンドリアの機能異常」は、エネルギーを産生する器官であるミトコンドリアが障害されることで、神経細胞にダメージを与えるのではないか、と考えられています。
「酸化ストレス」については、人間が体内に取り込んだ酸素の一部は活性酸素と呼ばれる、攻撃力が強い状態になります。ウイルスをやつけるなどの有用な効果もあるのですが、必要以上に増えてしまうと、神経細胞にダメージを与える(=酸化ストレス)と考えられています。(黒質では活性酸素の発生が多いことが知られています)
「異常蛋白質の蓄積」とは、パーキンソン病患者さんでは蛋白質の分解経路の異常があり、本来分解されるべき蛋白質が蓄積することによって神経細胞にダメージを起こすというメカニズムが考えられています。
今後、パーキンソン病の病態解明が進むことで、より根本的な治療法が発見されることが期待されます。
酸化ストレスなどが原因でミトコンドリアがダメージを受ける。不良なミトコンドリアの蓄積は細胞の機能不全を招きパーキンソン病を引き起こす可能性がある。
参考文献
Molecular pathogenesis of Parkinson’s disease: update. Saiki S, et al. JNNP 2012.