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多巣性運動ニューロパチー (multifocal motor neuropathy: MMN)
MMNは緩徐に進行する局所性または非対称性の筋力低下をみとめ、感覚障害を伴わないこ
とを特徴とします。ガングリオシドなどの糖脂質は神経系に豊富に局在しており、細胞膜の脂質二重層の外層において集簇して脂質ラフトを形成し、GPIアンカー蛋白やコレステロールなどと共存しています。
MMNにおける抗糖脂質抗体は、MMNのおよそ半数でGM1に対するIgM抗体が検出されると考えられており、EFNS/PNSの診断基準でIgM抗GM1抗体の上昇が支持基準として記されています。MMNにおける神経障害の機序としては、GM1は末梢神経の傍絞輪部とランビエ絞輪部の軸索膜に豊富に局在すると推定されており、IgM抗GM1抗体が結合することによってランビエ絞輪部に局在性に分布するNaチャネルを障害して伝導ブロックをきたす可能性が推察されています。
IgM抗GM1抗体はMMN以外にCIDPでも検出されることがありますが、MMNと比べて陽性率
は低いです。GM1以外の糖脂質に対する抗体として抗GM2抗体、抗GD1a抗体、抗GD1b
抗体も報告されていますが検出頻度は低いことが知られています。
IgM抗GM1抗体は、ALSで陽性になることもあります。
また、ギラン・バレー症候群やFisher症候群では単独の糖脂質にはほとんど反応をみとめず、2種
類の糖脂質を混合した抗原に対して強く反応を示す抗体がみられることがあり、抗糖脂質複合体抗体と呼ばれます。MMNにおいても糖脂質複合体に対する抗体が検出されることが報告されています。(GM1とGal-Cの混合抗原(GM1/Gal-C)に対するIgM抗体)
発症年齢は10歳代後半から70歳代までにみられるが40歳代が最も多く、患者の約7割は
男性とされます。発症率は10万人あたり0.29人とされます。
鑑別
萎縮筋にしばしば線維束性攣縮や筋痙攣がみられるため、ALSとの鑑別が重要です。特に上位運動ニュー ロン徴候が目立たないALSとの鑑別は困難な場合が有り、IVIgの反応性を確認することが重要です。まれに舌の半側萎縮がみられることが報告されています。またMMNでは寒冷刺激により症状が増悪することがあります。
MMNの治療
治療の第一選択はIVIgです。IVIg不応例では免疫抑制剤を併用することがあります。
CIDPには有効である副腎皮質ステロイドや血漿交換療法はMMNでは有効性は証明されておら
ず、症状が増悪する場合もあり推奨されません。