ALS

 運動ニューロン疾患(MND)は、運動ニューロンの系統変性疾患を意味する用語です。ALSがその代表ですが、ALSでは上位ニューロン障害および下位運動ニューロン障害が脳神経領域(舌、球筋群など)、頚髄領域(上肢)、胸髄領域(体幹)、腰仙髄領域(下肢)の複数の領域にまたがって認められるのが基本です。
臨床的には多様性があり、上位運動ニューロン障害を欠く進行性脊髄性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)やLMN障害を欠き比較的緩徐な経過を示す原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)と称される群もあります。また障害の分布に関しても病初期から脳神経領域が強く障害される進行性球麻痺型(progressive bulbar atrophy:PBP)、両上肢に限局するflai1 arm型、両下肢に限局するflail leg型、呼吸筋麻痺より発症する呼吸筋型もあります。

その他の運動ニューロン疾患

①SBMA

以前の記事も参照してください。

ALSと異なり経過が長い点が特徴です。発症10年程度で嚥下障害が顕著となり、発症15年で車椅子生活となる例が多く、発症から20年ほどの経過で球麻痺に起因する呼吸器感染などで死亡するとされます。

脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)

(ポイント)SMN1遺伝子が欠失するかorSMN2遺伝子に置き換わるかで重症度が決まる

SMAは脊髄の前角細胞の変性によって起こる進行性の筋萎縮と筋力低下を特徴とす
常染色体性劣性遺伝の下位運動ニューロン疾患です。SMAの分類としては、発症年
齢と臨床経過に基づき、胎児期に発症する0型、小児期に発症するⅠ型:重症型(Werdnig-Hoffmann病)、Ⅱ型:中間型(Dubowitz病)、Ⅲ型:軽症型(Kugerberg-Welander病)(近位筋優位の筋力低下)と、成人期に発症するIV型(孤発例が多い)に分類されます。小児期発症SMAの原因遺伝子は5番染色体長腕5q13に存在する運動神経細胞生存(survival motor neuron:SMN)遺伝子であり、SMN1遺伝子と名づけられています。SMN1遺伝子の近傍にSMN2遺伝子が存在します。SMAの重症度は、SMN1遺伝子欠損やSMN1遺伝子からSMN2遺伝子へ遺伝子変換することで、SMN蛋白質の発現量に決まると考えられています。

A 正常 B SMA症例 (内科学会雑誌107(8)より引用)

責任遺伝子であるSMN1 遺伝子及び修飾遺伝子としてのSMN2 遺伝子が存在し、その塩基配列は5塩
基を除いて相同です。SMN1 では、エクソン7のコドン280、エクソン7の+6番目がCであるが、SMN2 ではTであることにより、SMN2のスプライシングの過程で、ほとんどのエクソン
7がスキップされます
。また、イントロン7の+100番目がSMN1ではAであるが、SMN2ではGとなっ
ていることも、エクソン7がスキップされる理由です。このため産生されるSMN蛋白質の大部分は、短縮型の非機能性のΔ7となります(図2A)。そのためSMA患者における機能性の全
長SMN蛋白質は、SMN2 から産生されるわずかな完全長SMN蛋白質のみ
となります(図2B)。
I型からIV型の臨床的重症度の幅については、SMN2 遺伝子のコピー数、すなわちSMN2 遺伝
子がどの程度SMN蛋白質を産生するかによって決定します

臨床像が軽症の場合、SMN1 遺伝子欠失ではなく、遺伝子変換によりSMN1遺伝子エクソン7下流から6番目のCがTとなり、つまり、SMN1遺伝子がSMN2遺伝子の配列となり、SMN1 遺伝子からの全長SMN蛋白質ではなく、SMN2 遺伝子から全長SMN蛋白質が産生されます



PMAはSMA IV型である可能性があり、SMA IV型の原因遺伝子は多くは未確定です。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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