PSPとCBD

進行性核上性麻痺 progressive supranuclear palsy(PSP)大脳皮質基底核変性症corticobasal degeneration(CBD)は、病理学的にはいずれも脳に異常にリン酸化したタウ蛋白が蓄積するタウオパチーに分類されます。
臨床像は動作緩慢、筋強剛などのパーキンソニズムを呈し、厚生労働省の指定難病としてパーキンソン病関連疾患の中に包含されています。パーキンソン病と比べ有効な治療が乏しいのが最大の問題ですが、特にPSPではタウを標的にした病態抑止治療(抗体療法)の治験がスタートしています。


PSPの分類

進行性核上性麻痺 (PSP) は、垂直性核上性注視麻痺および早期の転倒を伴う姿勢保持障害を特徴とするリチャードソン症候群 (PSP-RS) 以外に多様な臨床病型が知られるようになりました。2017年に発表されたPSPの新しい診断基準(Movement Disorder Societyによる診断基準 (MDS基準))では、PSP-RSを含め8つの臨床病型が示されています。
抗パーキンソン病薬に対する反応性はPSP-Pで中等度認めるのみ(継続的な効果は期待できないとされます)でそれ以外はL-dopaの効果が乏しいのが特徴です。

Medical Practice 35(3) 2018より引用 

PSP-RS
古典的な疾患概念としての進行性核上性麻痺(PSP)は、Richardson症候群(RS リチャードソンと読みます)と呼ばれます。厚生労働省の診断基準では、①40歳以降で発症することが多く緩徐進行性を満たし、 ②主要徴候症候として,1)垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性衝動性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる) 2)発症早期(おおむね1~2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ 3)無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ、の1)~3)うち2項目以上を認め、さらに他の疾患を除外できる場合に診断できます。

PSP with predominant parkinsonism(PSP-P)
パーキンソン病のように振戦・左右差があり、レボドパが中等度有効で緩徐に進行します。

PSP with progressive gait freezing(PSP-PGF)
歩行や言葉のすくみが長期間先行します

PSP with predominant cerebellar ataxia(PSP-C)
四肢および体幹の小脳性運動失調が前景に立ち、初期には脊髄小脳変性症と診断されることがあります。PSP-Cは2年以内に姿勢保持障害や垂直性注視麻痺すなわちPSP-RSの特徴が現れる場合が多いです。主にわが国より報告されており、欧米では稀なので新診断基準には含まれていません。

大脳皮質徴候が主となるPSP

PSP with predominant corticobasal syndrome(PSP-CBS)
一側優位の失行をはじめとする大脳皮質徴候および錐体外路徴候が前景に立つ病型です。

PSP with predominant speech/language disorder(PSP-SL)
非流暢性失語などの言語障害が主となる病型です。

PSP with predominant frontal presentation(PSP-F)
前頭葉障害が優位となる病型です

これら大脳皮質徴候が前景に立つ病型は合わせてもPSP全体の1割以下と少ないことが知られています。

PSPの画像所見

①頭部MRIにおける中脳被蓋の萎縮(矢状断でのハミングバード・サイン)

ディサースリア臨床研究 9(1): 60-68, 2019より引用

②ダットスキャン(123I-FP-CIT SPECT)における線条体での集積低下

③MIBG心筋シンチグラフィにおける集積低下を認めない

PSPの治療薬


明らかな治療効果を示す薬剤は乏しいものの、レボドパが一部の症例ではパーキンソン病ほどで
はないにしても有効性を示すことがあります。特に上述のPSP-Pにおいては、発症早期であればレボドパは有効性を示します。用量は6錠程度まで増量して効果を確認します。無効と判断した場合は漫然と継続せず、ゆっくり減量し中止します。

機序は不明ながら、すくみ症状に対し抗コリン薬が有効な症例が報告されています。副作用として認知機能の低下、夜間せん妄、口渇、排尿障害に留意しつつ少量から開始し漸増します。

三環系抗うつ薬やドロキシドパなどが試されたこともありますが、十分なエビデンスはなく、あまり有効でないため積極的には処方しません。

PSPのリハビリテーション

すくみ症状に対し床にテー プを等間隔に貼り目印をつけたり、イチ,二,イチ,二と号令
をかけたりといった視覚的・聴覚的キュー(合図)が有効であることが多いとされます。転倒に伴う後頭部や膝のケガを防止するため、後頭部や膝への防護クッションを検討します。

参考資料

神経変性疾患領域における基盤的調査研究班
進行性核上性麻痺(PSP)診断とケアマニュアルVer4

plaza.umin.ac.jp/neuro2/pdffiles/PSPv4.pdf

大脳皮質基底核変性症(CBS)

日本では10万人あたり2人と稀な病気です(PSPは10万人あたり17.9人とされます)

CBDとCBS

CBDは①左右非対称 ②大脳皮質徴候 ③錐体外路徴候を臨床的特徴とする疾患ですが、CBDと臨床診断された症例の背景病理の多様性に関する報告が相次いぎ、このため大脳皮質基底核症候群corticobasal syndrome(CBS)を臨床診断名CBDを病理診断名として区別して使用されるようになりました。CBSの背景病理は、CBDは半数未満で、PSPとアルツハイマー病が20%程度であり、
その他に前頭側頭葉変性症、Pick病、レビー小体型認知症、クロイツフェルト・ヤコプ病なども認められます。

老年精神医学雑誌 30(10): 1139-1144, 2019より引用

CBDの検査所見

CBSの場合、検査所見や画像に左右差がみられるのが特徴で、頭部CT・MRIは初期には正常ですが、進行とともに非対称性の大脳萎縮が認められます。SPECTでも同部位の集積低下、脳波では症候優位側の対側に徐波化がみられます。

前頭葉に左側優位の脳溝拡大、脳回の萎縮があり(↑)側脳室周囲から深部にかけて左側優位の大脳白質病変が認められる(▲)
臨床画像 35(11): 1262-1270, 2019 より引用

臨床症状と反対側を優位とする前頭頭頂葉(特に中心前回・後回)や大脳脚の非対称性の萎縮を呈します。加えて中脳被蓋や脳梁の萎縮も認められることがあります。また、白質変性によるT2強調像やFLAIR像での皮質下、ときに深部にも及ぶ大脳白質の信号上昇や萎縮は診断的価値が高いとされます。

CBDの治療

根本療法はないため対症療法を行います。
筋強剛や無動に対してはレボドパが試みられますが有効例はあまりないとされます。
四肢のジストニアや開眼困難に対してはボツリヌス注射が行われます。
ミオクローヌスに対してクロナゼパム(リボトリール)が有効です。
認知症に対しては背景病理としてADが疑われる場合には抗認知症薬を試みても良いとされます。

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