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帯状疱疹ウイルス

帯状疱疹は水痘(みずぼうそう)感染後に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus : VZV)が、加齢や免疫低下などのイベントによる再活性化(=ストレスや免疫が下がったことで起こる)によって起こる疾患です。神経痛と帯状の水疱病変を特徴とします。帯状疱疹は80歳までに日本人の1/3が罹患すると言われています。

帯状疱疹の皮疹

帯状疱疹後神経痛(=皮疹が消えた後も残る痛み)

通常では、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、その後もピリピリするような痛みが持続することがあります。これを帯状疱疹後神経痛(post herpetic neuralgia: PHN)といいます。
帯状疱疹後神経痛を発症すると、日常生活に著しい支障を生じます。年齢に比例して痛みが長引くことが多く、50歳以上の方が帯状疱疹にかかると20%で後遺症としての神経痛を残すと言われており、特に70~80歳台では約30%の方に神経痛が残ると言われています。
帯状疱疹は VZV 特異的細胞性免疫の低下により発症する事が知られており、予防には免疫を賦活化するためのワクチン接種が効果的です。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹ワクチン(帯状疱疹の発症予防・重症化予防)には生ワクチンである水痘ワクチン(2016年認可)と、不活化ワクチン(免疫賦活剤であるアジュバントが入った組換えサブユニットワクチン(ウイルス表面タンパク一部を抗原とした組換えワクチン)であるシングリックス)の2種類があります。シングリックスは2020年に認可されました。

水痘ワクチン(生ワクチン)

ウイルス活性を弱めた生ワクチンで(小児では2014年から定期接種)、2016年3月から50歳以上の帯状疱疹予防として水痘ワクチンの任意接種が可能となりました。

シングリックス®(不活化ワクチン)

シングリックスは病原性をなくしウイルスの一部のみを使用した不活化ワクチンです。免疫力が弱った方にも接種が可能です。

水痘生ワクチンとシングリックスの違い

発症予防効果は従来型生ワクチン50%程度なのに対して、シングリックスは50歳以上で97%(70歳以上の89.8%)と効果が高いです。

効果持続期間は弱毒水痘生ワクチンが5年程度に対して、シングリックスは現時点で9年以上免疫が持続することがわかっています。

帯状疱疹は他人に伝染するか?

帯状疱疹は体内に潜伏しているウィルスが原因(再活性化)で発症するため、他の人から帯状疱疹として感染する事はないと考えられています。ただし、みずぼうそう(水痘)にかかったことがない人は、帯状疱疹の患者さんから伝染してみずぼうそう(水痘)として発症することがあります。

ワクチン(シングリックス®)接種のスケジュール

50歳以上の成人に、1回0.5mLを2か月間隔で2回、筋肉内に接種します。

シングリックスの副作用

接種した多くの方に注射部位の痛みや腫れが現れますが、これは体内で強い免疫を作ろうとする仕組みが働くためと考えられています。

シングリックス接種後7日間に起こった主な副反応としては、

注射部位の痛み78%、筋肉痛44%、疲労44%、頭痛37%、悪寒26%、発熱20%、胃腸症状17%でした。(グラクソ・スミスクラインHP参照)

新型コロナワクチン

新型コロナワクチンはシングリックスと2週間の接種間隔をあける必要があります。

接種間隔を2週間あければ、シングリックス接種1回目と2回目の間に新型コロナワクチン接種を行うことも可能です。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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