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グルタミン酸は覚醒のスイッチ
グルタミン酸は主要な脳内興奮性伝達物質であり,神経細胞を活性化し覚醒状態を維持する(覚醒のスイッチ)ことが知られています。
パーキンソン病は、黒質ドーパミン神経の変性によって運動症状(振戦、筋強剛、無動など)が引き起こされる疾患ですが、グルタミン酸の過剰な活性も病態に関与しています。
グルタミン酸に作用する抗パーキンソン病薬
・塩酸アマンタジン(NMDA型グルタミン酸受容体遮断作用→ジスキネジアに効果)
・エクフィナ(MAO-B阻害薬でグルタミン酸放出も抑制→ジスキネジアのある人にも使いやすい)
振戦とグルタミン酸
GPi(淡蒼球内節, Globus Pallidus internus)は、大脳基底核の一部であり、運動の調節に重要な役割を果たす領域です。特に、パーキンソン病や本態性振戦において、GPiの活動が振戦(手足のふるえ)に関与しています。振戦はGPiでの発火にグルタミン酸も関連することが知られています。パーキンソン病と本態性振戦はoverlapすることが多いことが報告されています。
なお、本態性振戦は、主に視床(VIM核)の過剰な活動が原因とされます。
REM睡眠とグルタミン酸
グルタミン酸は、REM睡眠を引き起こす神経回路の活性化に関与します。
REM睡眠行動異常症(RBD)
RBDは、REM睡眠中に筋抑制がうまく働かず、寝ている間に大声を出す、暴れて動き回るなどの行動がみられます。パーキンソン病やレビー小体型認知症の前兆となることがあります。
筋緊張の低下にグルタミン酸の異常な活性が関与している可能性が指摘されています。
ナルコレプシー(REM睡眠の異常な増加)
ナルコレプシーではREM睡眠が過剰に発生し、日中でも急にREM睡眠に入る(睡眠発作)。
グルタミン酸を調節する薬剤(モダフィニルなど)が治療に使われることがある。
夜間のドーパミン濃度の特徴
ドーパミンは夜間に低下します
日中(覚醒時):高い(活動性や集中力を維持)
夜間(睡眠時):低い(メラトニン分泌を促し、睡眠を誘導)
夜間にドーパミンが低下することで、リラックス状態を作り、睡眠を促進
パーキンソン病患者では夜間のドーパミン低下が顕著となり、朝方のoff症状(morning-off)を来すことがあります。