目次

脳の伝達物質は、大別すると脳を興奮させるか、鎮静させるか

興奮・覚醒方向に働く・・・グルタミン酸 アセチルコリン 

(加えてドーパミンやセロトニンは活動増加に働く)

鎮静方向に働く・・・GABA 

せん妄をみたらまず処方薬の確認が必要です。アセチルコリンのはたらきを弱める作用(抗コリン作用)をもつ薬剤は覚醒レベルを低下させてせん妄の誘因になることがあります。

ただ、バランスが大切で、ドネペジルを中止することで食欲が戻り、行動が落ち着くこともしばしばあるので注意が必要です。

睡眠薬は半減期が重要

しばしば認知症の患者さんでは不眠や昼夜逆転を経験します。

山口晴保 おはよう21 33(6): 4-7, 2022より引用

半減期は内服した薬剤がどれくらい続くか(血中濃度が半減するのに必要な時間)の指標です。

ゾルピデム(マイスリー)は半減期が非常に短いので、翌朝への持ち込みは少ないですが、中途覚醒が強い場合には、ゾビクロン(アモバン)やエスゾピクロン(ルネスタ)を検討したほうがよいでしょう。

ブロチゾラム(レンドルミン)は半減期が7時間と長いので、眠たい目覚めになるかもしれません。

エスタゾラム(ユーロジン)の半減期は24時間ですので翌日の昼間にも眠気が残っているでしょう。連用していると徐々に血中濃度が高くなり、認知機能や活動性に影響を与えることが予想されます。

アルツハイマー型認知症治療薬も、ドネペジルとメマンチンは半減期が約3日と長いので、増量や減量・中止から1週間後にその影響を評価します。
ガランタミンやリバスチグミンは半減期が短いので、中止から2日後にはその影響を評価できます。

抗精神病薬の半減期

妄想・暴言・暴力など過活動性の行動・心理症状(BPSD)が非薬物療法では治まらない場合、行動を鎮めるために、ドパミンの働きを弱める抗精神病薬がしばしば使われます。
クエチアピン(セロクエル)やリスペリドン(リスパダール)は、ドパミンに加えてセロトニンなどの働きも弱めます。

クエチアピンは半減期が3.5時間と短いので、夜間せん妄に有用で、7時間も経つと効果が薄れるので、夜間使用しても翌日の昼には活動性が戻ります。

一方リスペリドンは半減期が約1日と長いので、昼も夜も活動している場合には考慮します。

チアプリド(グラマリール)は半減期が6時間と短いので、屯用で使用することがあります。

抗精神病薬は副作用でパーキンソニズム(歩行障害、嚥下障害、口や舌をもぐもぐ動かすような不随意運動)が出てくることがあるので、症状が落ち着けば中止を検討します。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です