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DLBは三番目に多い認知症
レビー小体型認知症(DLB)は、脳内にαシヌクレインを構成成分としたレビー小体が蓄積する神経変性疾患です。
我が国の統計ではアルツハイマー病(67.6%)、脳血管認知症(19.5%)、DLB(4.3%)の順番に多い認知症(三大認知症)であることが知られています。
早期診断がしばしば困難で、精神疾患(うつ病、妄想性障害、遅発性統合失調症、せん妄など)と誤診されることがあります。行動心理症状(BPSD)や自律神経症状・運動症状などの体の症状が早期から出現します。抗精神病薬に対する過敏性など、薬の副作用が現れやすいことがよく知られています。
2017年にDLBの臨床診断基準が改定されました。改訂のポイントとしては
①中核的特徴にレム睡眠行動異常が加えられたこと
②診断基準項目を臨床的特徴とバイオマーカーとに分けたことがあげられます。
バイオマーカーの項目においては、MIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下がより重要な所見
として格上げされました。
DLBの診断基準
2017年に新しい診断基準に改訂されました。以下を参照。
1進行性の認知症
→前提(必須症状)となりますが、早期に記憶障害が目立たないこともあります。注意や認知機能障害、視空間機能の障害が目立つ場合があります。
(例)MMSEが20点を超えていて全般的な認知機能障害はあまり強くないが、五角形の模写が全く認識できずできない。
日常生活で難しくなってきた事がないか確認するのが大切です。
初期症状としてアルツハイマー病ではほぼ前例で記憶障害がみられますが、DLBでは初期に記憶障害がみられるのは6割程度です。
記憶障害の進行はアルツハイマー病とDLBでほぼ同程度とされます。
2中核的特徴(2つ以上で臨床的にDLB)
・認知の変動(ぼーっとしている日もあれば冴えた日もある=調子の良い日と悪い日がある)
・幻視(せん妄でも幻視がみられるが、違いはDLBでは後でもハッキリ幻視を覚えていて語れる)
幻視以外の幻覚(幻聴が多い・お腹に穴が空くなどの体感幻覚のことも)もみられます
・パーキンソニズム(寡動 安静時振戦 筋固縮のうち1つ以上)
・レム睡眠行動異常(発症5-10年前からみられることも)
→記憶障害が出てからしばらくしてパーキンソニズムや幻視が出てくることも多いです。
3指示的特徴(直接診断には関わらないがしばしばみられる)
・抗精神病薬に対する過敏性(抗うつ薬・抗不安薬でも出現しやすい)
BPSDがアリセプトで増悪することも
抗コリン薬で精神症状悪化
タンドスピロン(セディールⓇ)セロトニンに作用し精神症状悪化
など
・神経因性膀胱はあまり多くないとされます(排尿障害は頻尿が大半です)。起立性低血圧は多くDLBの約半数で出現するとされます(姿勢の不安定性や転倒を繰り返すこともあり、多系統萎縮症との鑑別が必要です)。
・過眠(昼間うとうと)→アセチルコリンの中枢であるMynert(マイネルト)基底核の脱落との関係が指摘されています。
4指標的バイオマーカー(1つ以上当てはまれば、2中核的症状が1つあれば臨床的にDLB)
・ドパミントランスポーターの取り込み低下
・MIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下
・睡眠ポリグラフ検査による筋緊張低下を伴わないレム睡眠の確認(眼が動くレム睡眠期でも筋の緊張がみられるため体が動いてしまう)
DLBの妄想
誤認妄想が多いです。
具体的には、幻の同居人(誰かが住みついた)/替え玉妄想(家族や配偶者が別人になっている)/重複記憶錯誤(全く同じ場所がもう一つある)/テレビ現象(現実と区別がつかなくなる)/鏡現象(鏡に話しかける)。ポイントとしては妄想が体系化されており、アルツハイマー病よりストーリー性があるという点です。
60歳以降に好発する遅発性パラフレニーという被害妄想もみられます。時に幻覚もみられ、独居女性に多いとされます。
DLBとせん妄
せん妄はDLBの経過中に限らず、発症前にもしばしば出現します。
せん妄があり、いったん改善した後に再び認知機能低下が進行したような病歴の場合はDLBの可能性を抑えておく必要があります。
DLBの治療
ドネペジルは認知機能障害だけだはなく、BPSDに対しても一定の効果があるので、非定型抗精神病薬を投与する前にまずはドネペジルの効果を評価します。
効果不十分なら抑肝散を用います。(1-2包/日から開始)4週間効果が無ければ中止。甘草が成分に含まれるので、低カリウム血症をきたすことがあり、血圧上昇や足のむくみが出た際には注意が必要です。
重症の幻覚・妄想では、クエチアピンやアリピプラゾール(エビリファイⓇ)を投与します。ハロペリドールは禁忌。3-4ヶ月投与して症状が和らいできたら副作用発現を防ぐため、減量・中止します。
うつ症状に対してはミルタザピン(リフレックスⓇ)などを少量から(三環系抗うつ薬は抗コリンの副作用が多いので避け、SSRIやSNRIを選択します。)
睡眠薬はあまりエビデンスがある内服薬がありません。まずは十分な非薬物療法→日中の活動量増加、午前中日光に当たるのが大事。アルツハイマー病やDLBでは、海馬のGABAα1サブユニットが減少してしまうため、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は効きづらく転倒骨折などの副作用が出やすいとされます。
起立性低血圧の治療は①薬物療法 ②非薬物療法 に分けられます。
薬物療法としてはドロキシドパ(ドプスⓇ)・ミドドリン(メトリジンⓇ)・フルドロコルチゾン(フロリネフⓇ)があります。
注意点としては、メトリジンは半減期が4時間であり、朝昼に使い夜は使いません。昼寝で臥位高血圧を起こすことがあり注意が必要です。フロリネフは副作用として心不全に至ることがあります。
非薬物療法としては、食事性低血圧を防ぐために塩化ナトリウム0.5-1gを毎食に投与したり、食前の多めの水分摂取も低血圧の予防に有用です。
夜間頻尿に対しては、頭を30度挙げて寝ると良いです。腎血流量が減るので夜間頻尿の予防となります。ミラベクロン(ベタニスⓇ)も過活動膀胱に有用ですが、抗コリン作用による認知症発症リスク上昇に注意が必要です。
便秘に対しては、乳製品やオリゴ糖(ゴボウ・タマネギ・きなこ)摂取は有用です。排便は側腹部に力を入れるように指導します。
下剤は刺激性の下剤は頓用にします。Clチャネル賦活性下剤は薬価の問題はありますが有用です。エロビキシバット(胆汁酸トランスポーター阻害薬)は、肝臓で合成される胆汁酸は大腸管腔内への水分分泌や消化管運動を促進させることを利用した下剤です(グーフィスⓇ1日1回食前)。大建中湯もアセチルコリンを増やし腸管運動を促進します。
Cingulate Island Sign(CIS);帯状回島兆候
DLBで後部帯状回の血流は相対的に保持され島状に残存する所見です。ECD-SPECTで評価可能です。アルツハイマー病では通常、後部帯状回の血流が早期から低下するため、DLBと鑑別をする上でも重要な所見です。
このCISをDLBの鑑別診断に利用するためにeZISソフトにCIScoreが加えられました。CIScoreでは0.281をカットオフ値とした場合、0.281未満で感度92.3%、特異度76.9%、正診率84.6%とされます。このCISは経時変化がみられ。MMSEと比較すると22点でピークを持ち、進行するにつれて不明瞭になります。進行すればするほど明瞭になる通常のバイオマーカーとは異なるため、注意が必要です。
CIscoreは、後頭葉を中心とする DLB の疾患特異領域(Region of interest 1; ROI-1)と AD の疾患特異領域から DLB の疾患特異領域を除いた後部帯状回を中心とする領域(ROI-2)の二つの ROIが自動的に設定されROI-2 における血流低下側の Z スコア合計を ROI-1 における血流低下側の Z スコア合計で除することでCIScore が算出されます。
まとめ
高齢発症の精神症状・せん妄にDLBの可能性を念頭に置く必要があります