目次
1. 急性期治療とは?
片頭痛の治療には「予防」と「発作時の治療(急性期治療)」があります。急性期治療薬とは、実際に頭痛が起きたときに痛みを抑えるための薬のことです。
2021年以降、新しい作用機序の薬が次々と登場しています。従来のトリプタン系に加え、ラスミジタン(ditan系;レイボーⓇ) や CGRP受容体拮抗薬(gepant系;ナルティークⓇ) も選択肢に加わりました。これにより、患者さんの症状や体質に合わせた治療がより柔軟に行えるようになっています。
2. 急性期治療薬の種類
分類 | 主な薬の名前 | 特徴 |
---|---|---|
① トリプタン系 | スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタンなど | 血管拡張を抑えて痛みを改善。発作の早期に服用することが重要。 |
② ditan系 | ラスミジタン | 新しいタイプ。脳内神経に作用し、血管への影響が少ない。 |
③ gepant系 | ウブロゲパント、リメゲパント | CGRPという痛み伝達物質をブロック。副作用が比較的少ない。 |
④ NSAIDsなど | アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなど | 軽度の片頭痛に。市販薬でも使用可能なものが多い。 |
⑤ 補助薬・その他 | 制吐薬、ステロイド、エルゴタミン製剤など | 他の薬の効果を補助したり、重症例に使うことがある。 |
3. 効果の強さと使い分け(薬効group)
Group | 評価 | 代表薬 |
---|---|---|
Group 1(有効) | 強く推奨される | トリプタン系、ラスミジタン、ウブロゲパントなど |
Group 2(ある程度有効) | 中等度の効果あり | アセトアミノフェン、NSAIDsなど |
Group 3(経験的に有効) | 補助的に使われる | ステロイド系など |
Group 4(有効だが副作用注意) | 効果あるが慎重投与 | 抗不安薬、抗精神病薬、エルゴタミン製剤など |
Group 5(無効) | 効果が確認されていない | 特定の鎮痛薬など |
4. 片頭痛薬の使い方(タイミング・用量・頻度)
💡服用のベストタイミング: 頭痛が始まってから「我慢せず、早めに服用」することが大切です。
痛みのピークに達してからでは薬の効果が十分に得られないことが多いです。
ポイント:
– トリプタン系は「1日2回まで」など制限あり。
– gepant系・ラスミジタンは併用注意。
– 市販薬で改善しない場合は医師に相談。
5. 緊張型頭痛や群発頭痛の急性期治療
◆ 緊張型頭痛
主にアセトアミノフェンやNSAIDsを使用。慢性的な場合はストレスや姿勢の改善も重要です。
◆ 群発頭痛
痛みが非常に強く、スマトリプタンの注射薬や点鼻薬が推奨されます。
同時に酸素吸入(7L/分 × 15〜30分)で改善が見られることもあります。
6. まとめ
- 軽度の頭痛 → アセトアミノフェン・NSAIDs
- 中等度以上 → トリプタン系
- トリプタンが効かない/使えない → ラスミジタン or gepant系
- 群発頭痛 → スマトリプタン注射+酸素吸入
新しい薬が登場し、片頭痛治療は日々進化しています。自己判断せず、医師と相談して最適な治療を選びましょう。
参考文献
日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修
頭痛の診療ガイドライン2021(医学書院)