目次
hereditary spastic paraplegia,HSPとは
遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia,HSP)は、下肢の痙性(つっぱり)を主徴とする疾患です。本邦では、厚生労働省の指定難病においては、脊髄小脳変性症の枠内で認定がなされています。約半数の症例には家族歴が認められ、発症に際して遺伝子の影響が想定されているが、残りの半数の症例は孤発例です。
HSPは70種類以上に分類され、SPG◯(遺伝性痙性対麻痺◯型)のように表記されます。
HSPの遺伝形式で最多は常染色体優性遺伝ですが、劣性遺伝もまれに認めます。
常染色体優性遺伝のHSPについては、4型(SPG4)の頻度が圧倒的に多く、40-50%程度を占めます。その他、SPG3A・SPG31がそれぞれ5%程度、SPG8・SPG10が数%程度を占めます。積極的に遺伝子解析を行うことにより、60%強で診断を付けることが出来るとされます。
SPG4
常染色体遺伝形式をとるHSPの40%はspastinをコードするSPG4遺伝子の変異です。
純粋型(pure form)はSPG4が50%とされます(下肢痙性麻痺以外の症状を有するものは複合型とよばれます)不完全浸透もみられます。
SPG4は基本的に純粋型で、下肢の突っ張り(痙性)の症状がメインであり、その他軽微な感覚障害と膀胱直腸障害を合併するのみであることがほとんどです。発症年齢は幅広く、10歳以ド~70歳代であり、家系内で同じ変異を有していても、重症度や発症年齢は異なることが知られています。
その他の優性遺伝形式をとるHSPとしてSPG3A・SPG31があります。SPG4と1司様、純粋型を呈することがほとんどですが、時に末梢神経障害を合併することがあります。SPG4と比して進行はさらに緩徐であるとされています。
SPG8・SPG10が常染色体優性遺伝形式HSPの数%程度を占め、PG8は基本的に純粋型を呈するが、
SPG10については末梢神経障害を合併する頻度が高いとされます。
常染色体劣性遺伝HSP(SPG11)
SPG11は脳梁の菲薄化を伴う常染色体劣性遺伝HSPとして最多の病型であり、原因遺伝
子はspatacsinをコードするSPG11です。通常20歳以下の発症で、下肢の痙性に加えて、知的障害、
末梢神経障害・筋萎縮を合併することが特徴的です。パーキンソン症状や視神経萎縮、膀胱直腸障
害、構音障害、嚥下障害などを合併することもあります。
参考文献
石浦浩之HSPの分了遺伝学と遺伝子診断 臨床神経2014 54 1016-1017.