疫学

脳静脈・静脈洞血栓症(cerebral venous and sinus thrombosis : CVST)の発生率は10万人当たり年間1.3~1.6人、全脳卒中の0.5~1%を占める比較的まれな病態です。稀ですが若年脳卒中の原因として重要な疾患です。約10%で重度の後遺症や死亡例を認めるため早期の診断・治療が求められます。

静脈性梗塞(皮質下白質に広がることが多い)や静脈性出血(機序は灌流障害による浮腫(静脈拡張)→梗塞→静脈性出血)をきたす前に静脈洞血栓症を診断し、早期の抗血栓療法に結びつけることがポイントです。(脳実質内の出血はCVSTの1/3に認められます。)

静脈洞血栓症成人の静脈洞血栓症の発症はほとんどが20~50歳代の若年~中年層で占められ、65歳以上の高齢層では10%未満と少ないことが特徴です。

若年~中年における静脈洞血栓症の発症率は女性が男性の約3倍と高く、この性比は経口避妊薬や妊娠・ 出産など女性特有の血栓症リスクに由来すると考えられています。

臨床所見

硬膜静脈洞やこれらに還流する皮質静脈に生じた血栓により、完全ないしは部分的に静脈が閉
塞し、静脈うっ滞(還流障害)を起こすことに起因します。好発部位は①上矢状静脈洞(前頭葉や頭頂葉)、②横静脈洞(側頭葉や後頭葉)、③皮質静脈(灌流域に限局した病変)です。他に④深部静脈系(基底核や視床。しばしば両側性)でも本症がみられます。

(頻度は上矢状洞横静脈洞>深部静脈>直静脈洞>皮質静脈)

原因は外傷・感染・炎症・プロテインCやプロテインS欠乏症・経口避妊薬内服・悪性腫瘍など血栓傾向を助長する状態(凝固亢進状態)にあることが挙げられますが、原因不明なことが多いです(約25%)。

潰瘍性大腸炎における腸管合併症として全身の動静脈血栓症・塞栓症がみられることがありますが、稀に本症をきたすことがあります。

 初期症状としては頭痛(75-95%)を認めることが多いですが、初期にはきわめて非特異的な症状しか示さないため、静脈性梗塞・静脈性出血を検出した後に、静脈洞閉塞の診断に至ることが多いです。静脈うっ滞により静脈内圧の上昇、細胞性浮腫、静脈性血管性浮腫をきたすと静脈性梗塞・出血を生じ、頭蓋内圧の亢進・巣症状や痙攣を呈します。局所的な神経症状・けいれんは、脳実質内に画像にて異常を呈した例に多いです。病状や血栓の局在によって症状は変動しやすい(血栓形成・融解・再開通があるため)ことが知られています。頭蓋内圧亢進症状はCVSTの20-40-%に起こるので、頭蓋内圧亢進症状があれば常に本症を考慮することが重要です。

画像所見

静脈洞閉塞急性期は、T2強調画像で静脈洞のflow void(流れている組織が画像上で無(低)信号となる)の消失を示しますが、(急性期)血栓自体はデオキシヘモグロビンを主体(T2で著明な低信号)としていることが多く、T2強調画像のみでは急性期は診断が困難なことも多いです。FLAIRでは急性期の血栓は高信号をきたすことが多く、診断に有用です。また拡散強調像でも発症早期では閉塞した静脈が高信号に描出されることがあります(脳静脈洞血栓症の画像診断においては、拡散強調画像では拡散係数が上昇することもあれば低下または正常値を示すこともあり、脳浮腫や脳梗塞に対しての拡散係数や拡散強調画像の診断価値はいまだに一定の見解を得ていません。ADCは上昇~低下までさまざま)磁化率強調像では、還流静脈内のデオキシヘモグロビン濃度の上昇を反映して皮質静脈が著明な低信号を呈します
造影所見では、静脈洞の壁ないしは側副血行路が造影されるのに対して、静脈洞内部(血栓)には造影効果が無く、静脈洞血栓を示します(empty delta sign
MRによる確定診断には、造影MRA元画像ではTEが短いため、血管はflow voidを呈すること
なく、良好な血液プール造影効果が得られます。静脈洞やそれに還流する皮質静脈に血液プール
造影効果欠損を認めれば、静脈洞血栓症の確定診断となります。MRVも診断に有用です。

MRIでの血栓信号変化

①急性血栓(5日以内)T1で等信号、T2で低信号(赤血球内のデオキシヘモグロビンによる)
正常な血流と同様な信号強度になることがあり、急性期ではMR静脈造影・CT静脈造影が必要になります。

②亜急性期血栓(6-15日)血栓内のメトヘモグロビンにより、T1強調像およびT2強調像にて主に高信号を示します。

③慢性塞栓(発症16日以降)T2は等~高信号、T1は低信号が多いですが、血栓の信号強度は種々なこともあります。

治療

抗凝固薬(ヘパリン)が第一選択となります。rt-PA療法による治療の報告例もあります。

痙攣を生じた場合は抗痙攣薬投与・頭蓋内圧亢進症状が視られる場合にはグリセオールなども使用します。

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