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Perry症候群とは
Perry症候群は①パーキンソニズム・②うつ/無気力(初発症状)・③原因不明の体重減少・④中枢性低換気(=呼吸機能が保たれている割に二酸化炭素がたまる)をきたす予後不良(罹患期間は約5年)の稀な遺伝性疾患(浸透率が高い常染色体優性遺伝性疾患)です(平均発症年齢は48歳。Perryは発見者のカナダ人の名前です。)。2009年DCTN1(ダイナクチン)が原因遺伝子として報告されました。L-Dopa反応性の症例もあり(通常のパーキンソン病と比べると反応性は乏しい)、パーキンソン病との異同が問題となります。
ダイナクチンは物質輸送(軸索輸送)などに関わる数種類のサブユニットから成るタンパク複合体です(下図)。物質輸送(軸索輸送)の障害で様々な神経疾患が発症することが知られています。
ペリー症候群は呼吸障害をきたす
PDとの異同が問題となる臨床徴候を呈するのとともに、短い経過の中で突然呼吸障害から突然死に至ることがわかっており、早期診断しALSと同様に病名告知をして人工呼吸管理をするか否か選択していく必要性も考慮されるべきです。ALSの呼吸障害との違いは、ALSで中枢性低換気になるのは珍しいことです。脳が障害されるのがcentral hypotension(CHS)であり、ALSは呼吸筋がやられます。Xpで呼気・吸気で肺が良く動いているのは、CHSを指示する所見です。
TDP-43プロテイノパチー
DCTN1変異はパーキンソン症状に加え、TDP-43プロテイノパチーを引き起こすことも知られています。ユビキチンおよびTDP-43陽性の神経細胞質封入体が錐体外路や呼吸中枢に観察されます。
(ALSや前頭側頭型認知症との病理学的な違いは、Perry症候群では脳幹部・基底核に局在するTDP-43病理がみられることです。)
検査所見
パーキンソン病と同様に、DaT-scanやMIBGシンチで集積低下が報告されています。
まとめ
・パーキンソン病で中枢性低換気(CO2ナルコーシスなど)を呈する場合はペリー症候群の鑑別が必要
・DCTN1(ダイナクチン)の遺伝子変異が原因で発症