脊髄小脳変性症との鑑別

変性疾患である脊髄小脳変性症の鑑別として、症候性による失調症状をまず鑑別する必要があります。

少数ですが、特に以下の疾患を見逃さないことが大事です。

甲状腺機能低下症

抗NAE抗体陽性の失調症という概念もあります。

橋本脳症は慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う白己免疫性脳症で、有病率10万人当たり2.1人と言われています。発症は20-70歳まで様々です。臨床症状は小脳運動失調以外にも、記憶低下や精神・情動といった大脳辺縁系の症状や痙攣など多彩です。(意識障害と痙攣精神症状が急性に発症することがあり、他の自己免疫性脳炎やヘ
ルペス脳炎など辺縁系脳炎との鑑別を要することがあります)。
 甲状腺機能は低下から亢進まで様々ですが、大部分が正常であり、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗
体(anti-thyroid peroxydase antibody:抗TPO抗体)や抗サイログロブリン抗体が陽性
になります。髄液検査では軽度の細胞増多・蛋白上昇がみられます。頭部MRIでは異常所見がみられないことが多いです。診断には抗N末端α-エノラーゼ(amino(NH2)-terminal of α-enolase〕抗体(抗NAE抗体)が有用です。特異度は91%と高いものの、感度は50%程度であり陰性例でも橋本
脳症の否定はできません。治療はステロイドパルスおよび内服が著効します。

アルコール中毒

①アルコール性小脳変性症

亜急性~慢性に経過する歩行失調と下肢の協調運動障害を主症状とします。失調性の歩行が特徴で、上肢や体幹の運動失調、眼振や構語障害は明らかでないことが多いです。小脳の虫部上面と上葉が障害されて萎縮がみられ、小脳半球の変化には乏しいです(頭部MRI正中矢状断が診断に有用です)。脳幹は萎縮しません。

不思議とアルコール性の小脳萎縮と末梢神経障害合併は少ないことが知られています。中枢神経と末梢は個人によってダメージの受けやすさが異なることなどが理由として考えられています。

禁酒をすれば少し症状が改善します(痙性ある場合も良くなります)

②ウェルニッケ小脳(ビタミンB1欠乏)

ビタミンB1欠乏により、急性~亜急性にウェルニッケ脳症(Wernicke encephalopathy)が惹起され、意識障害、眼球運動障害,小脳失調の3徴を呈します。
背景には慢性の重度の栄養障害が存在し、慢性アルコール中毒の患者がウェルニッケ脳症を発症することが多いです。3徴の中では意識障害が最もみられることが多く、3徴がすべて揃うのは30%程度とされます。眼球運動障害としてもっとも多い症状は眼振であり、この他に外眼筋麻痺を呈することがあります。
ビタミンB1欠乏による中枢神経系以外の疾患としては脚気が知られ、腱反射低下・末梢感覚障害・心不全症状を呈します。

特定の薬物による中毒

抗てんかん薬(フェニトイン)・リチウム・フルオロウラシルなど

ビタミン欠乏症

ビタミンB1・B12・E欠乏症

傍腫瘍性小脳失調症

小脳失調症が亜急性に進行する場合に鑑別します。

肺小細胞癌・卵巣癌・乳癌を特に高齢者では検索します。

                     (難病と在宅ケア 岡本光夫ら 24(9)2018)より

脳血管障害

多発性硬化症

中枢神経感染症

脳腫瘍

CTX(Cerebrotendinous xanthomatosis) 脳腱黄色腫症

常染色体劣性遺伝を呈するCYP27A1遺伝子変異による27–水酸化酵素の機能障害に起因する先天性代謝性疾患です。CTXでは胆汁酸合成経路が障害され、中間代謝産物である7α–hydroxy–4–cholesten–3–oneを経て、コレステロール代謝産物である、血中コレスタノールが上昇し、脳、脊髄、腱、水晶体、血管など全身臓器に沈着し、様々な臓器障害を惹起します。診断には血清コレスタノールを測定します。

さらにはケノデノデオキシコール酸(CDCA)の著明な減少がみられ、治療はCDCAの補充を行います。

臨床症状として,新生児期の黄疸・胆汁うっ滞、幼児期発症の慢性的な下痢、若年性白内障、腱黄色腫、若年性動脈硬化症、骨粗鬆症などの全身症状や、知的障害、痙性対麻痺、小脳失調、錐体外路症状、てんかん、末梢神経障害などさまざまな症状がみられます。

MRIで大脳白質や小脳歯状核に高信号病変を認めます。

・有機溶剤暴露歴

・抗glutamic acid decarboxylase (GAD) 抗体陽性小脳失調症

GADはグルタミン酸からGABAを合成する酵素です。
以前の記事も参考にしてください。

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