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webで日本認知症学会に参加してきました。日本医科大学千葉北総合病院の山崎峰雄先生のご講演では、認知症の病理について勉強しました。
アルツハイマー病
老人斑のThal phase(タールと読みます)
アミロイド沈着は大脳新皮質→嗅内野→線条体→脳幹→小脳と拡がっていく(phase1-5)
アミロイド沈着は神経原線維変化に先行/認知症と関係する(=神経細胞脱落と相関がある)のは神経原線維変化
神経原線維変化の広がりを示したものがBraakステージ
CERAD老人斑スコア(セラドと読みます)
神経突起を伴う老人斑の数を病理学的に評価(新皮質で観察)
出現頻度でアルツハイマー病の確からしさを評価する(C0-C3)
NIA-AA診断基準
上記を組み合わせて評価したもの
レヴィ小体型認知症
従来考えられていた中枢神経系だけで無く、末梢神経(嗅球・皮膚)も含んで広範囲にシヌクレインの蓄積が認められ、全身病としての位置づけがなされてきている。
Lewy小体には脳幹型と皮質型がある。Lewy小体は神経細胞に存在するが、周囲にあるLewy突起(ニューライト)も病態に関与する。
シヌクレインの広がりは
①消化管などの末梢神経→迷走神経→延髄背内側核(中枢)
②嗅球などの大脳辺縁系→大脳
へ拡がっていく2経路が想定されている。シナプスなどを介して他の細胞に拡がっていく。
タウオパチー
認知症を来す疾患では異常蛋白が蓄積するものが大部分であるが、そのなかでもタウは重要。
タウは神経原性変化を構成する蛋白である。
生化学的には3リピート(PiCK病)、4リピート(PSP、CBD)といずれも蓄積する6アイソフォーム(分子種)の3パターンだが、疾患特異的な病理構造物がそれぞれ出現する。病態との関連は未だ不明だが、疾患のメカニズムともつながりがあると考えられる。
進行性核上性麻痺
進行性核上性麻痺(PSP)では中脳黒質・淡蒼球・視床下核・上小脳脚・歯状核などに病変が分布する。前頭葉や小脳は脳幹や視床下核よりも遅れて病変が出現する。ガリアス染色でtufted astrocyte(突起が細かく伸びているアストログリア)が観察される。PSPの神経原線維変化はADでみられるような火炎状(flame shape)とは異なり丸々とした形(globose type NFT=球状)の構造物です。
PSPには様々な臨床亜型があるが、本邦ではPSP-RSとPSP-Cが多い(PSP-Cは全体の2割)
MRI画像ではhumming bird sign(ペンギンサインとも言う)が有名
これは中脳吻側の萎縮が高度のため下に凸となりハチドリのくちばし状にみえる。
PSP-RSと比較してPSP-Pでは程度が軽い。特異度は高いが感度が低いので、下に示すような脳幹萎縮のパラメータが用いられる。
(Movement Disorder 2013)
現在考えられている進展仮説としてはさまざまなPSPの臨床亜型が進行するとPSP-RSになるのではないかと考えられています。
皮質基底核変性症(CBD)
病理学的に小さな突起(ドット状)が同心円状にみられる(astrocytic plaque)
CBSは臨床診断(若年発症ではCBD・AD 高齢発症ではPSPが多い)/CBDは病理診断名
嗜銀顆粒性認知症
高齢者タウオパチーで最多(嗜銀顆粒は4Rタウ陽性)
臨床診断は困難→ADとは異なり進展が遅い、易怒性やMCI止まりの症例も多い
側頭葉の左右差が特徴
神経原線維変化型老年期認知症・PART
認知症のもっとも多くを占めるアルツハイマー病は、脳に「アミロイドβ」というタンパク質が異常蓄積することが中心的特徴→近年、アルツハイマー病と診断される患者さんのうち一定の割合はアミロイドβの異常蓄積を認めない(アミロイドPET陰性)であることがある。
→ADと症状が似ているが異なる病気
→アミロイドβは正常レベルでありながらアルツハイマー病に似た神経変性を示す病態を「SNAP(Suspected non-amyloid pathophysiology:アミロイド陰性・神経変性陽性(A-N+)つまり非アルツハイマー病の病態生理の疑い)」と呼ぶ。
SNAPにはいくつかの病態が含まれる
→primary age-related tauopathy (PART)などが含まれる
正常加齢過程が加速された状態で、軽微な変化~神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT 認知症を呈する)を含む。
SD-NFTは海馬領域に多数のNFTを認めるが、老人斑を欠く。
FTLD(前頭側頭葉変性症)
臨床分類は①行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)②意味性認知症(SD)③進行性非流暢性失語症(PNFA)に分類される。
FTLDは病理診断名になる。