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ポストポリオ症候群

ポストポリオ症候群(post-polio syndrome; PPS)は、ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者さんが、ポリオ罹患後数十年を経てから進行性の筋萎縮、疾痛、筋力低下が患肢、あるいは麻痺が明らかでなかった四肢の一部に出現する病態です。ALSなどの運動ニューロン疾患との違いは、常に進行性ではなく、ある程度進行すると筋力低下は停止します。

PPSの機序については、十分明らかではありませんが、脊髄前角運動ニューロンは30-40%が残存すれば、ほぼ正常な筋力を維持できるとされます。ポリオ罹患時、既に30-40%に減少した脊髄運動ニューロンが3-40年の経過で、加齢による神経細胞脱落が起こる結果、わずかの運動ニューロンの減少でも著明な筋力低下となって現れている加齢性変化と推定されます。

小児麻痺患者さん(注;脳性麻痺とは異なります 小児麻痺=ポリオです)の PPS の発症率は 20~85%と報告によってばらつきがみられます。

PPS の症状には、新たな筋力低下、疲労、筋肉痛、関節痛、筋萎縮、睡眠障害、呼吸機能障害、嚥下障害、冷え症などがあります。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害がみられなかった肢にも比較的高頻度で起こりうる症状とされます。稀に呼吸機能障害・嚥下障害が急速に進行する症例も報告されています。

PPS の発症機序はいまだ不明な点が多く、有効な治療法も確立されておらず、リハビリや疼痛に対する対処療法が中心となります。

ALSとの違いは、polioは下位運動ニューロン症状のみ認めます。現状では上位運動ニューロン障害との関係は不明です。polioとALSを合併した、という報告もあります。

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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