特発性頭蓋内圧亢進症idiopathic intracranial hypertension: IIH)は 1893 年に Quincke が脳腫瘍をみとめない頭蓋内圧亢進症を記載したのが最初に報告された疾患です。

頭蓋内圧亢進にともなう頭痛・視力障害などの自覚症状をみとめ、うっ血乳頭と髄液圧の亢進を呈す
る疾患で、以前は予後の良い疾患と考えられ良性頭蓋内圧亢進症と呼ばれていました。近年は永続的な視力障害を呈する症例が存在することから、特発性頭蓋内圧亢進症と呼ばれています。

診断は、髄液検査で髄液圧亢進をみとめるも髄液組成は正常であり、他の頭蓋内圧亢進を呈する疾患を除外することによって診断されます。

治療は 脳圧を下げるacetazolamide(アセタゾラミド)で改善がみられるばあいが多いですが、視力低下が出現した時はシャント術や視神経鞘開放術などの外科的加療を行います。

IIH は妊娠可能な年齢の肥満女性に好発することが知られています。脂肪組織から分泌されるレプチンの関与や脂肪組織と性ホルモンとの関連が示唆されています。

(治療例)
Rp)アセタゾラミド(ダイアモックス®)250mgを1-2T分割して投与

ダイアモックス®は,炭酸脱水酵素を阻害する薬剤です。炭酸脱水酵素は、二酸化炭素と炭酸水素イオンとを相互変換することで、組織から二酸化炭素を運び出す働きをしています。体内でできた二酸化炭素はわずか20%がヘモグロビンと結合して運搬されるだけで、大部分は炭酸脱水素酵素によって炭酸(H2CO3)に変換され、水素イオンと重炭酸イオンに変換されます。重炭酸イオンは、肺でまた二酸化炭素にもどり呼気として放出されます。水素イオンは尿中に排泄されます。

炭酸脱水酵素を阻害すると、水素イオンの尿中排泄が阻害され、ナトリウムイオンが再吸収されず利尿作用を持ち、脳浮腫が利尿作用によって改善します。また尿がアルカリ性に傾くことによっても血中の水素イオン濃度が上昇し血液pHは下がります。この結果呼吸中枢を刺激して換気量が増大します。高山病にも治療薬・予防薬として用いられます。(点眼薬として緑内障治療にも用いられます)

このほかにも,ダイアモックス®は毛様体上皮中に存在する炭酸脱水酵素の作用を抑制することによって房水の産生を減らして眼圧を低下します.また,中枢神経組織内に存在する炭酸脱水酵素を抑制し,脳のCO2濃度を局所的に増大させることによって,てんかんなど精神神経疾患の治療にも使われます.