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肉眼的血尿で考えられる疾患
肉眼的血尿(目で見て尿に血が混じっている)は、若年者ではない場合、泌尿器科的疾患であることがほとんどとされます。悪性腫瘍(がん)は特に重要です。
どのような検査を行うか
①テステープ
尿潜血のチェックを行います。尿潜血以外にも尿糖や尿蛋白有無もわかります。
②尿沈渣
尿を遠心分離して、沈殿物を顕微鏡で観察します。
変形赤血球の有無もチェックします。
尿沈査の赤血球形態が「変形」であれば糸球体性、「均一」であれば非糸球体性であり、また、色調が暗赤色や赤褐色(=脱ヘモグロビン色素)であれば糸球体性、鮮紅色(=ヘモグロビン色素に富む)であれば非糸球体性であることを示唆します。(糸球体は腎臓で老廃物の排泄を行う部分です)
ポイントは尿路出血部位の違いにより尿中赤血球形態に差異が認められるということです。
③尿細胞診
尿路上皮癌のスクリーニング検査として行います。尿中にがん細胞が混入していないかを診断します。
他に尿中腫瘍マーカー・CT・腹部超音波検査などがあげられます。
ナットクラッカー症候群
ナットクラッカーとはくるみ割りという意味です。
左腎静脈が腹部大動脈と上腸間膜動脈の間で狭窄され、左腎静脈と左腎にうっ血をきたす疾患です。
左の腎静脈は右の腎静脈より約3倍長く、腹部大動脈から急角度で分岐する上腸間膜動脈からわずか数mm下に存在します。
血尿や起立性蛋白尿の原因となります。
内臓脂肪の少ない痩せ型体型の方に多く見られます。
左腎静脈圧が上昇することで、静脈と尿路が交通して肉眼的血尿をきたすと考えられています。自然軽快することも少なくありません。ナットクラッカー症候群では貧血がみられることがあります。
参考文献
血尿診療ガイドライン編集委員会編.血尿診療ガイドライン.ライフサイエンス出版,東京,2013.