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子宮頚癌ワクチン=HPVワクチン
子宮頚癌ワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンです。不活化ワクチンになります。HPVは200種類以上あり、癌の原因となるのは13種類と言われ、子宮頚癌の65%が16か18によることが知られています。
女性の50~80%は、一生涯1度はハイリスクHPV(癌の元になるようなウイルス)感染するといわれます。ほとんどの人(90%程度)は自身の自然免疫で治るものの、一部の方が持続感染して異形成を起こします。高度異形成まで進んでいくと、癌になってしまうと考えられます。
持続感染のリスク因子として、HPVの型(16、18、31、33、35、52、58)、複数回感染(アクティブなセクシャリティーがある)・免疫不全、タバコ、長期のピル使用があげられます。
子宮頚癌ワクチンは、子宮頚癌、尖圭コンジローマなど、女性のHPV関連疾患を予防するワクチンです。
子宮頚癌は、HPVが持続的に感染する(数年~数十年)ことで、異形成を生じた後、浸潤癌に至ることが明らかになっています。子宮頚癌は年間1.1万人の罹患者とそれによる2900人の死亡者をきたすなど重大な疾患となっています。罹患率は20代から上昇し、40代でピークを迎えます。
2つのHPVワクチン
現在定期接種の対象となっているワクチンは2価ワクチン(サーバリックス®)(HPV16・18を予防)、4価ワクチン(ガーダシル®)(HPV6・11・16・18を予防)があります。
2価ワクチン(サーバリックス®)は子宮頚癌の高リスク遺伝子型である16型と18型を含んでおり、4価ワクチン(ガーダシル®)は16型と18型に加え、尖圭コンジローマ(性器にできるいぼ)の主(95%)な原因とされる6型・11型の遺伝子型を含んだものをいいます。
9価のワクチンは日本でも認可されていますが、定期接種の対象ではありません。HPV6・11・16・18・31・33・45・52・58を予防します(子宮頚癌の88.2%を予防できる)。
2価ワクチンの方が中和抗体が高く、免疫持続が長くなります。
2価と4価で接種スケジュール・ワクチン成分が異なります。2価と4価を組み合わせて接種することはできません。必ず同じワクチンで3回接種することになっています。
4価ワクチンの効果
・子宮頚癌発症を88%減少
・遅れて打っても(17歳より後に打っても)子宮頚癌は53%減少
・子宮頚部異形成(CIN1-3 癌の手前)も減少
HPVワクチンの接種スケジュール
定期接種が定められている年齢は、小学校6年から高校1年までの5年間となっています。3回接種となります。6ヶ月かかります。
標準的接種年齢は中学1年生とされています。
2価と4価では2回目の接種をするタイミングが異なります(それぞれ2回目が1ヵ月後ないしは2ヵ月後、3回目は6ヵ月後)
HPVワクチンの安全性
HPVワクチンは接種後の持続性疼痛と運動障害の報告がありました。この症状が報告されたため2013年6月より積極的勧奨を差し控えることとなり、接種率が激減(70%→1%)しました。
しかしながら、現在はHPVワクチンそのものの副反応ではなく、痛み刺激に伴う機能的身体症状と推察されています。前後関係はあっても、因果関係はなく「紛れ込み」と考えられています。根拠となるデータとしては、名古屋スタディ(コホート)では、比較群を置いた調査で差が無いことが知られています。
WHOでは根拠薄弱なエビデンスに基づく政策決定は、安全で有効なワクチンの使用を控えることとなり、真の害をもたらしうる、と日本を批判しています。WHOでもこれまでの文献がレビューされ、重篤な副反応は稀であり安全性が高いワクチンと判断されています。
2017年のWHOでも、HPVワクチンは優れた安全性および有効性を持つという見解が示されています。2022年より積極的勧奨が再開されました。