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L-dopa

パーキンソン病は脳内のレボドパが減って起こる病気です。よって、ドパミンを補充する治療が効果的です。

ドパミンは内服しても血液脳関門(Blood Brain Barrier)という脳のバリアを通ることができません。(BBBは脳と脳脊髄液への単純拡散を防ぐ役割/視床下部や松果体にはBBBが無いため血糖(などの水溶性物質)が到達できる→血中濃度がダイレクト(のどが渇くなど)/BBBは二酸化炭素や酸素、アルコールや麻酔などの脂溶性物質を通し、血漿蛋白や水溶性物質は通さないという特徴があります。)
そこで血液脳関門を通れるドパミンの元となるレボドパ製剤を内服します。

(レボドパ製剤の例)
メネシット(レボドパ・カルビドパ水和物 ネオドパストンやカルコーパ、ドパコール、パーキストン、レプリントンも同じ種類。デュオドーパも同様です。
・マドパー(レボドパ・ベンセラジド塩酸塩 イーシー・ドパールやネオドパゾールも同じ種類です)

副作用として長期間内服しているとジスキネジア(自分の意志とは無関係に体が動いてしまう不随意運動/体をくねらすような粗大で不規則な不随意運動であり、高度になると随意運動を妨げます)がみられることがあります。(多くは血中濃度がピークになるときにみられ、off時間の前後にdiphasicにみられることがあります。)
他にも、薬の効いている時間が徐々に短くなってしまうウエアリングオフ現象(wearing-off)も長期間内服に従い問題となります。

病初期のハネムーン期はL-dopaは6-8時間作用しますが、中期は3-5時間、進行期では30分-2時間程度まで効果が短縮します。

ジスキネジアやウエアリングオフなどの運動合併症発症は、ドパミン神経終末の変化により、ドパミン保持能残存低下が起こることが原因で発症します。

レボドパ100:カルビドパ10→メネシット
レボドパ100:ベンゼラジド25→マドパー
両者はL-dopaとDCI(dopa-decarboxylase inhibitor 末梢性ドパ脱炭酸酵素阻害薬)の配合剤ですが、DCIが異なるため、ドパミンへの変換率が異なります。マドパーは血中最高濃度がメネシットの約2倍です。

レボドパ製剤は脳に入る前に酵素によって分解されてしまうので、分解酵素の働きを抑える薬として誕生したのがコムト(COMT)阻害薬です。

スタレボはレボドパ製剤とCOMT阻害薬が合剤になっている内服薬です。

スタレボを内服すると尿の色が赤くなることがありますが、これは薬物が代謝されて尿から排出される際に着色することがあるためです。

2016年にはデュオドーパという、ゲル状にしたレボドパ製剤を胃瘻経由で空腸に投与する治療法も承認されました。血中濃度を一定にすることで、ジスキネジアやウエアリングオフ現象の改善が期待されます。カセットを持ち歩く必要があります。

COMT阻害薬の副作用としてジスキネジアがあげられます。

MAO-B阻害薬

脳内のドパミンはモノアミン酸化酵素(MAO)という酵素で分解されます。

このMAOの働きを抑えることで、ドパミンの分解を抑える薬です。

(COMT阻害薬は末梢で働き、MAO-B阻害薬は中枢で働きます)

MAO-B阻害薬は65歳未満発症など将来的な運動合併症の危険性が高い症例では、最初に治療薬として選択されることがあります。
(サフィナミドはレボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善のみが効能効果になります。)

(例)セレギリン エフピー アジレクト エクフィナ(一般名サフィナミド)

ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体作動薬)

ドパミンアゴニストは、ドパミンの代わりにドパミン受容体を直接刺激する薬物です。ドパミン受容体にはD1-D5までの受容体が存在します。

一般にドパミンアゴニストはL-dopaと比較して作用時間が長く、運動合併症を発症するリスクが低いことが長所であり、レボドパ製剤を使ったときのようなジスキネジアやウエアリングオフ現象出現のリスクを下げることができます。

しかし、眠気・むくみ・衝動制御障害(ギャンブルにはまる・性欲が異常に高まる)・幻覚・妄想といった副作用があります。延髄第4脳室底にある化学受容器引金帯CTZ(chemical trigger zone)ドパミン受容体を刺激することで、この刺激が嘔気中枢に伝わり嘔気・嘔吐がみられることもあります。精神症状の副作用のうち、ドパミン調節障害(必要以上のドパミン補充療法への渇望)はL-dopaの方が起こりやすいことが知られています。

(例)レキップ(ロピニロール) ミラペックス(プラミペキソール) ニュープロパッチ アポカイン

ドパミン受容体にはD1受容体ファミリー(D1・D5)と、D2受容体ファミリー(D2・D3・D4)が知られていますが、ニュープロパッチ・アポカイン以外はD2受容体ファミリーへの作用が主体で、D1およびD5受容体への親和性は低いことが知られています。

また、パーキンソン病の患者さんでは筋強剛(こわばり)から痛みを感じることがありますが、貼付剤のニュープロパッチは痛みに効果があるというデータがあります。

アポカイン(一般名アポモルフィン)はドパミンアゴニストの一種で半減期は一時間です。

サインバルタという抗うつ薬もパーキンソン病の痛みに効果があるとされます。

ドパミン遊離促進薬

(例)シンメトレル アマンタジン

薬の効果はあまり強くないのですが、副作用が少なく、レボドパ製剤によって起こるジスキネジアに有効です。
シンメトレルはジスキネジアに有用です。

透析患者ではアゴニスト・シンメトレルを避けます

L-ドパ賦活薬(ゾニサミド)

商品名はトレリーフ

振戦に効果があり、幻覚などの副作用も少ないとされます。ウエアリングオフ現象の改善には50mgまで投与量を増やす必要があります。レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムにも効能効果があります。

ノルアドレナリン前駆物質

(例)ドプス

ノルアドレナリンの前駆物質で、中枢神経でノルアドレナリンに変換されることによって交感神経機能を直接的に改善させます。すくみ足や起立性低血圧症状の改善が期待されます。

アデノシンA2A受容体拮抗薬(イストラデフィリン)

商品名はノウリアスト

神経細胞はドパミンとアデノシンという2つの物質が相反する作用をして運動機能を調整しています。アデノシン拮抗薬はアデノシンという物質の働きを抑えて、減っているドパミンとのバランスを回復させます。

抗コリン薬

(例)アーテン

脳の線条体はドパミンアセチルコリンという2つの神経伝達物質を使って筋肉に指令を出します。パーキソンでは両者のバランスが崩れている状態であり、アセチルコリンを抑えることで症状が改善することがあります。

振戦の強い人には有用とされます。

物忘れや軽い錯乱が起こることが有り、高齢者への投与は注意が必要です。

柴朴湯

漢方薬です。パーキンソン病の姿勢障害に有用とされます。
厚朴による骨格筋緊張の中枢性ドパミン作動性調節などが推察されています。

(処方例)

Rp)柴朴湯7.5g 3×食間or食前