目次

はじめに

新型コロナウイルスはSARS-COV2(サーズコロナウイルス2)と命名され、このウイルスによる感染症がCOVID-19です。(以前の記事COVID-19 基本知識 | 群馬県高崎市 総合内科専門医・神経内科専門医のブログ (furuta-neurology.com)も参考にして下さい)

このウイルスは症状発現前から感染力があって、発症直前や発症初期に最も高くて、次第に感染力は低下していきます。免疫不全者や重症者を除けば、発症7-10日以降の感染は考えにくいことがわかってきています。

上気道からのウイルス検出は進行期より感染初期にされ、初期の方が飛沫による感染力が高いです。

主な感染様式は、飛沫感染により人から人へ感染します。飛沫感染が主体と考えられていますが、咳・鼻水などの飛沫のみならず、換気が悪い環境では会話でも伝染しうる(会話は細かいしぶきと考えられます)のが特徴です。

抗原検査とPCR

COVID-19の検査はPCR検査、空港などで行う抗原定量検査と、クリニックで多く行われる抗原定性検査があります。

PCR検査は鼻咽頭から行うPCRに加え、唾液鼻腔(自分で鼻の穴をグルグル回転させて取る)があります。

無症状の段階ではPCR検査がスタンダード(抗原検査は感度が低い)ですが、有症状者かつ発症早期では(鼻咽頭からの)抗原検査でも検出可能です。抗原検査は発症初期ではPCR検査との一致率が高いことが知られています。ウイルス量が減ってくる後半では抗原検査の感度が低下してしまうことが知られています。

PCR検査において、唾液検査は発症早期では有効ですが、時間が経過するとあまりすすめられない(早期に陰性となる)とされます。歯磨きなどで偽陰性になる点も注意が必要です。

重症度分類

厚生労働省診療の手引きより引用

日本の重症度分類はオリジナルで、東京都と日本が別(統一されていない)であったりします。

アメリカでは日本のように中等症を1、2に分けていません。酸素が必要になるレベル(=日本の中等症2)が重症になります。ところが日本はICU管理、つまり生命維持装置がつくものを重症と分類します。

軽症と中等症1の違いは肺炎があるか無いかですが、治療法は同一になります。

初の経口抗ウイルス薬「ラゲブリオカプセル200mg」

抗ウイルス薬「モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル200mg)」は外来でも使用可能な経口剤であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐことが期待されています。

ヌクレオチドアナログ型の抗ウイルス薬です。機序はRNAポリメラーゼ阻害薬(ウイルス遺伝子が複製されるのを防ぐ)

本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2021年12月24日に特例承認されました。なお、重症度の高い患者に対する有効性は確立していません。

18歳以上の患者に、1回800mg(4カプセル)を1日2回、5日間経口投与します。症状が改善しても5日間飲みきる必要があります。COVID-19の症状が発現してから速やかに投与を開始する必要があります。(臨床試験において有効性が確認されたのは発症から5日以内に投与を開始した感染者であり、6日目以降における有効性のデータは得られていません。)

SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者さんが投与の対象です。処方の際には患者本人に内容を確認してもらったうえで、患者・医師双方がサインして保管することになっています。

本剤の作用機序はウイルス複製阻害(新型コロナウイルスのRNAに取り込まれることによって、ウイルスの増殖を阻害して抗ウイルス作用を示す)であり、オミクロン株に対してもこれまでの変異株と同様の効果が期待できると考えられています。

投与の対象となるのは、以下のような重症化リスク因子を1つ以上有する軽症~中等症の患者です。

61歳以上の高齢者
活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)
慢性腎臓病(CKD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肥満(BMI 30kg/m2以上)
重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)
糖尿病

脳神経疾患(多発性硬化症 ハンチントン病 重症筋無力症など)

内服により下痢、悪心・嘔吐、めまい、頭痛などの症状が現れることがあります。これらの症状が生じた場合であっても自己判断で中止しないよう注意する必要があります。また、妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用できません。授乳中の人は注意が必要ですので、服用開始前に相談してください。妊娠する可能性のある女性は、服用中および服用後4日間は適切な避妊を行ってください。

既存のCOVID-19治療薬との違い

モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル200mg)は、軽症~中等症COVID-19患者に使用できる国内初の経口抗ウイルス薬です。

重症化リスクのある軽症者へ、早期投与(5日以内)すると入院リスクを30%減少させることが報告されています。(重症化リスクがある人が対象で、すべての人に投与する薬ではありません)

これまで、軽症患者を対象とした治療薬としては、中和抗体製剤(モノクローナル抗体)のカシリビマブ/イムデビマブ注射液セット(ロナプリーブ)とソトロビマブ点滴静注液(ゼビュディ)の2剤が承認されていて、中等症患者を対象とした治療薬としては、抗ウイルス薬のレムデシビル点滴静注用(ベクルリー)が承認されています。

経口剤では、中等症と重症患者を対象としたJAK阻害薬のバリシチニブ錠(オルミエント)とステロイド薬のデキタメタゾンが使用されています。バリシチニブはJAK阻害薬というリウマチの薬ですが、免疫を調整する効果に加え、抗ウイルス効果があることが知られています。

治療のポイントとしては①軽症例では抗体療法およびラゲブリオ、重症化リスクのない患者さんには依然治療薬がない ②重症化して炎症がひどくなった段階でリウマチの薬やステロイドが入る、ということになります。軽症ではウイルス増殖を抑え、重症では炎症を抑える方針となります。

2022年2月には新規経口抗ウイルス薬であるnirmatrelvir and ritonavir パキロビッドも使用可能になりました。

参考文献

感染症プラチナマニュアル第7版 岡 秀昭 メディカル・サイエンス・インターナショナル

投稿者

古田 夏海

群馬県高崎市「ふるた内科脳神経内科クリニック」で脳神経内科・内科の診療を行っています。

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