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片頭痛の重症度を客観的に評価するためには質的な評価(スコアリング)が必要です。HIT-6やMIBS-4について説明します。

HIT-6:頭痛があるときの重症度
HIT-6(Headache Impact Test-6)は、片頭痛が生活に与える影響(頭痛発作の重症度)を評価するツールです。信頼性と妥当性が確立されており、臨床と研究の両面で広く活用されています。
HIT-6は、頭痛の影響を評価するための6つの質問から構成されます
HIT-6の質問内容
頭が痛いとき、痛みがひどいことがどれくらいありますか?
頭痛のせいで、日常生活に支障が出ることがありますか?(例えば、家事、仕事、学校生活など)
頭痛が原因で、日常の役割や仕事を制限されたり妨害されたりすることがありますか?
頭痛のために活力が低下したり、疲労を感じたりすることがありますか?
頭痛のせいで、集中力や認知機能に影響が出ることがありますか?
頭痛により精神的な苦痛やストレスを感じることがありますか?
評価方法
回答は「まったくない」「めったにない」「ときどきある」「よくある」「常にある」の5段階で評価され、それぞれ6点、8点、10点、11点、13点に点数化されます。
6つの質問の合計得点で、36点から78点の範囲で評価されます。
点数の解釈
36~49点:ほとんどまたは全く日常生活に支障なし
50~55点:中程度の影響
56~59点:かなりの影響
60~78点:重大な影響
このようにHIT-6は頭痛が日常生活にどの程度影響を与えているかを評価するためのツールです
間欠期バーデン(interictal burden)とは?
片頭痛発作では頭痛がないときにも 生活に支障がみられます(発作間欠期症状)
84%で支障を有すとされます
(例)ライトがいやな感じがする
MIBS-4:頭痛が無い時の重症度
「MIBS-4(Migraine Interictal Burden Scale – 4)」は、片頭痛の発作がない時期(間欠期)における生活への影響を評価するための質問票(質的評価)です。近年注目されており、片頭痛治療においてはMIDASやHIT-6では拾いにくい「間欠期の負担(インターバーデン)」を捉えることができます。
MIBS-4 評価方法(質問と点数)
対象期間:過去4週間
次の4項目について、片頭痛が「ない日」における影響の程度をそれぞれ0〜3点で評価します。
質問項目 内容例 評価スケール
Q1 仕事・学業への影響 0:なし ~ 3:重度
Q2 家事・家庭での活動への影響 0:なし ~ 3:重度
Q3 社交や人間関係への影響 0:なし ~ 3:重度
Q4 心の状態への影響(不安・抑うつなど) 0:なし ~ 3:重度
各項目 0~3点、合計最大 12点。
スコアの解釈(推奨される目安)
合計点数 評価 意味合い・臨床的示唆
0~2点 最小またはなしの負担 片頭痛の間欠期にほとんど影響なし。現状維持で経過観察。
3~5点 軽度の間欠期負担 軽度の影響あり。生活指導や状況に応じた治療見直しを検討。
6~8点 中等度の間欠期負担 日常生活への影響が顕著。予防療法の導入などを考慮。
9~12点 重度の間欠期負担 明確な負担あり。積極的な治療介入が推奨される。
エムガルティは発作間欠期症状を改善させる
エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)は、片頭痛患者の発作間欠期負担(不安や社会生活への支障)を評価するMIBS-4スコアを有意に改善させることが臨床試験で示されています。
ランダム化プラセボ対照試験の結果、エムガルティ投与群では、投与1か月後にプラセボ群と比較して有意にMIBS-4スコアの改善が認められました。
さらに、盲検期間終了後に全員へエムガルティを投与した際、プラセボ群で効果がなかった患者でもMIBS-4スコアの改善が確認されています。
エムガルティは、こうした発作間欠期の負担も軽減できる数少ない治療薬の一つです。
エムガルティの副作用
主な副作用は注射部位反応です。17.7%で認めるとされます。予防には注射部位への「冷えピタシート」が有用とされます。
また注射部位は腕より大腿・腹部の注射の方が痛みが少ないことが知られています。
頭痛の認知行動療法
薬物療法以外にも「運動する」「3食食べる」なども片頭痛の予防に大事です。