SCA31とは

SCA31は、常染色体優性遺伝性の脊髄小脳変性症spinocerebeller ataxia (SCA)の一型です。臨床的には歩行時のふらつきやろれつが回らないなどの小脳症状で発症することがほとんどで、発症年齢は平均で60歳程度と比較的高齢であるのが特徴です。また発症後の経過が10年以上経っても、多くの症例では小脳症状は増悪するものの、他の神経系統に目立った障害を起こすことが少ないです。このような特徴を純粋小脳失調症pure cerebellar ataxiaとよび、これもSCA31の特徴です。

SCA31とRNA介在型神経筋疾患

2000年に16番染色体長腕に連鎖する家系を報告されたことに始まり、2009年に同領域内の遺伝子BEAN(brain expressed associated with NEDD4)とTK2(thymidine kinase 2)が共有するイントロン(非翻訳領域)に存在する繰り返し配列の異常(TGGAAという5個の塩基配列が100個以上挿入されます(通常2000-4000kbの挿入長となります)。正常人ではリピートそのものが存在しません。)が原因で起こります。ヒトの脳でRNAが分解されずに固まっている(RNA foci)のが観察されます。RNA fociに加えて、伸長リピート(pentapeptide repeat)アンチセンス鎖由来の蛋白もみられることが報告されています。(TDP-43蛋白はRNAの構造異常を抑制するRNAシャペロン(RNAと結合して構造を安定化させるタンパク質)として機能すると考えられています。)
RNA介在型神経筋疾患(RNA-mediated repeat expansion neurological disorder)に属すると言えます。

RNA介在型神経筋疾患

SCA31の他に、筋強直性ジストロフィー・SCA8・FXTASSCA36などが含まれます。
共通した病態として、ゲノム中に存在するDNAのリピート(繰り返し)配列が転写され、スプライシングを受けた後にRNAの形で核内などに凝集します。
共通して、長いリピート配列を持つRNAが様々なRNA結合蛋白と結合して、RNA foci(RNAの凝集体)として神経細胞内で凝集・蓄積し、異常RNA自身による毒性獲得(RNA gain of function)もしくはRNA結合タンパク質が本来果たすべき機能が障害されることによるRNA代謝障害(RBP loss of function)による発症メカニズムが想定されています。

筋強直性ジストロフィー(DM1)発症メカニズム

遺伝子変異であるMPTK遺伝子3’非翻訳領域のCTGリピートが、伸長CUGリピートとして転写され、核内に凝集します(RNA foci)。その過程で一本鎖CUG結合リボ核タンパク(CUG-BP)の発現亢進とRNA結合蛋白であるMBNL1(Muscle blind-like protein 1)が、fociに隔離・没収(sequestration)されます。そのためCUG-BPやMBNL1で制御されるさまざまな下流の遺伝子、例えばトロポニン遺伝子、インスリン受容体遺伝子、筋特異的Clチャネル遺伝子などのスプライシング異常がおき、筋肉での筋緊張異常やジストロフィーの他に白内障や心伝導障害、耐糖能異常など様々な臓器に異なる障害が起きると考えられています。

SCA31の診断方法

repeat-primed PCRと呼ばれる遺伝子検査で診断します。SCA31のTGGAA配列を特異的に認識するプライマーを用い、繰り返し数に応じた様々な長さのフラグメントを検出します。
プライマーはリピートの色々な所にくっつくためシングルバンドにならず、様々な長さのバンドができます。そして、くっつく長さに限界があるので減衰してきます。

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投稿者

古田 夏海

群馬県内の総合病院で脳神経内科医として勤務しています。

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